【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.96】早乙女太一『支えてくれる人たちのありがたみを知ったことで大きく成長できた』(掲載開始日:2010年3月18日)

早乙女太一(さおとめ・たいち)
1991年9月24日生まれ。福岡県出身。大衆演劇の劇団朱雀の座長、葵陽之介のもとに生まれ、幼少から舞台の上で育つ。2003年、北野武監督作品『座頭市』にて映画デビュー。さらに2005年には『TAKESHIS'』で早乙女太一役で出演した。2008年には、新歌舞伎座にて最年少座長公演をつとめた他、宮本亜門演出の『トゥーランドット』にも出演。2009年には劇団☆新感線蛮幽鬼』に出演するなど幅広く活躍している。

表現することは「仕事」ではなく「生活」の一部だった (早乙女太一)

初舞台を踏んだのが4歳のときで、それ以前の記憶はほとんどないくらいですから僕の場合、気がついたらこの道に入っていたという感じ。学校から帰って、公演がある日は舞台に立って、その後も踊りや芝居の稽古にあけくれて。それを「仕事」と意識することもなかったし、逆に「遊び」というわけでもなく、表現することを生活の一部のように考えていました。

映画『座頭市』に出演したのは9歳のとき。カメラの前で演技をするのは生まれて初めての体験でしたが、今、思い返してみると、自分でも信じられないくらいマイペースでやってました。ただ、エンディングでタップをするシーンがあるんですけど、最初は予定されていなかったことで、途中から急遽、踊ることが決まってあわてて練習したんです。だから、親と一緒に試写会に行ったときは、ものすごく緊張していました。親の反応はどうたったかって?

覚えてません。たぶん、聞けなかったんじゃないかな(笑)。

この映画出演をきっかけに、いろんなことが変わっていきました。親だけじゃなくて、いろんな方に踊りを習うようになって、世界が広がったんです。10歳になってからは、本格的に女形の稽古も始まりました。

女形の踊りには、手足や指などの細かい仕草、体の向きなどにキチンとした形があって、それを身につけるには、何度も何度も稽古を重ねるしかありません。最初のころは、それが嫌でたまらなくて、今でも決して楽だと思ったことはありません。だけど、その積み重ねが今の自分を作っているわけだから、やってきてよかったなと思います。

最年少での座長公演。重圧に押しつぶされそうだった (早乙女太一)

2007年、16歳になった僕に大きな転機がやってきました。『早乙女太一~蒼伝説を舞う』という公演を行ったんです。初の大役だったし、しかも国際フォーラムという、それまで経験したことのない大きな舞台での公演でした。とにかく、お客さんの拍手の大きさに圧倒されるばかりで、手応えを感じるというよりも、自分の表現の小ささを知ったような体験でした。

だからその翌年、新歌舞伎座での最年少座長公演が決まったときは、大きなプレッシャーを感じました。このとき、自分に座長がつとまるなんてことは1%も思っていなかったですからね。ただこの公演には、それまで大衆演劇の合同公演で共演した先輩、大先輩がたくさん出演してくださったんですが、その方々の存在にすごく助けられたんです。これは、僕にとってとても大きな体験でした。自分という存在が、まわりの人たちの支えによって成り立っていることに気づかされ、それによって強くなれた。成長できたような気がしたんです。

同じ年には宮本亜門さん演出の『トゥーランドット』に出演するのですが、そういう心の変化があったからこそ、新しい挑戦に向かっていけたのかもしれません。宮本亜門さんにはそれこそ演技の仕方のゼロから10まで教えてもらい、本当に貴重な勉強をさせてもらいました。

これからも枠にとらわれず可能性に挑戦し続けたい (早乙女太一)

2009年の10月には、劇団☆新感線の『蛮幽鬼』に出演したんですが、これも思い出深い出来事でした。劇団☆新感線は、大好きな劇団だったからです。確か12~13歳くらいのころでしたけど、同じ大衆演劇の世界で活動している橘大五郎さんに誘われて、公演を観に行ったんです。音楽、照明、立ち回り、すべてがカッコよくて、引きつけられました。僕にとって、生まれて初めて感動したお芝居といってもいいかもしれません。

もちろん、この公演でもたくさんのことを学びました。殺陣のシーンなど、今までやったことのないことがたくさんあってむずかしい稽古でしたが、逆にそれを楽しんでいる自分を発見したときは、ちょっとうれしかったですね。

こうしてこれまで、いろいろな経験を積むことで、大きく成長したという実感が今の僕にはあります。だから、何かひとつの枠に自分をあてはめるのではなく、これからもあらゆる可能性を試していきたい。そして、自分にしかできない、ひとつのジャンルを確立したいというのが夢です。

今回、明治座という大きな舞台に立つということも、自分の可能性を大きく広げてくれるものと思っています。『嗚呼、田原坂』という題材は、国際フォーラムの舞台で踊った演目のひとつということで、不思議な縁を感じます。でも、今回は芝居として結城新之助という役に挑むことになるので、これも新たなチャレンジです。共演者の方々、スタッフの方々のお力を借りながら、自分を素直に表現したいですね。

早乙女太一さんへQ&A

Q:もし、役者になっていなかったら?
A:小さいときに料理人とか、医者とかに憧れたことはありましたけど僕自身、その道に進んでいる自分は、想像もつきません。
Q:最近の悩みごとは?
A:夜中に、ちょっとした物音でも目が覚めてしまうこと。どんなところでも眠れる人がうらやましいです。
Q:落ち込んだときに食べるパワーフードは?
A:白ごはん。こう見えても、けっこう食べるほうです。毎食かならずおかわりしますから。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

僕が演劇を観に行くときに気をつけていることは、『気をつける』ということをしないこと。もちろん、そのお芝居の背景とか、役者さんのこととか、キチンと調べて観るというのもひとつの楽しみ方ではあると思いますけど、無駄なことを考えず、舞台の上で起こっていることに集中することが大事なんだと思います。

これから演劇をしようと思っている人へ

僕自身が心がけているのは、自分を信じて、突き進んでいくこと。とはいえ、自分を見失ってしまうときもよくあります。そのとき大事なのが、まわりの人たちの支えなんですね。その人たちへの感謝の気持ちは、つねに忘れちゃいけないことだと思っています。強い気持ちを持つということは、決して自分ひとりではできないことなんだなと思います。

早乙女太一さんの次回公演情報

一、嗚呼、田原坂 二、早乙女太一 舞踊ショー の画像画像を拡大する
一、嗚呼、田原坂 二、早乙女太一 舞踊ショー

早乙女太一が、「明治座」に初登場する!

時代劇『嗚呼、田原坂』で美貌の剣士、結城新之助役に扮する第1部。そして妖艶な女形と、早乙女太一の魅力をたっぷり楽しめる第2部ともに、見所は満載。エンターテイナーとして無限の可能性を秘めた早乙女太一の「今」を、大劇場ならではのスケールでお贈りする。名古屋・御園座に渡っての公演にも乞うご期待!

東京公演 名古屋公演
2010年4月1日~12日 2010年4月16日~27日
明治座 御園座
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取材・文/ボブ内藤 撮影/松谷祐増(TFK)
スタイリスト/Rockey
衣装協力/DIET BUTCHER SLIM SKIN(Venom)・
RUPERT((株)P/X)・BIGLIDUE(@IZREEL渋谷パルコ店)・
A LITTLEVILLAGE,#1.

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