小学4年生のときに『スター・ウォーズ』を観て、打ちのめされたことが最初の転機でしょうか。映像のすごさはさることながら、SFなのに「むかしむかし」で始まる物語なんてあり得ないでしょ?
その翌年には、ミニチュアを作ってプラモデルの飛行機を飛ばしたりする8ミリ映画をセッセと作っていました。
コメディにも興味があって、アメリカの『サタデー・ナイト・ライブ』のファンにもなりました。ところが、この番組のスターであり、僕にとっての「神」だったジョン・ベルーシが突然の死を遂げたことに大変なショックを受けまして。「神様でも死ぬことはある。それは、仕方のないことなんだ」と納得するまでにはかなりの時間がかかりましたね。死んだ人に何かを期待してもはじまらない。自分が行動を起こさなきゃいけないんだと結論づけたわけです。
それが中学1年生のとき。コメディアンになるという夢は、その後もずっと持ち続けていて、高校の三者面談では先生と親の前でコメディの仕事をしたいと宣言してました。ところが、コメディアンになる道を山形県の高校の先生が適確にアドバイスしてくれるはずもなく、悶々とした日々を送っていたんです。
そんなある日、ある人に手紙を書きました。イギリスの伝説のコメディ集団「モンティ・パイソン」のテリー・ジョーンズがそのとき、『ラビリンス/魔王の迷宮』という映画の脚本を書いていて、その映画会社に送ったら届くんじゃないかと思ったわけです。手紙には、自分の悩みを素直に書きました。社会運動家のネルソン・マンデラのキーワードである「Wind of change(変化の風)」という言葉を例に出して、自分もそういう風を起こしたいと手紙の最後に書いたときは、それだけで満足していたくらい。だから、その手紙に返事が来たときは、飛び上がるくらい驚いたんです。
テリー・ジョーンズの自筆の手紙には、こんなことが書かれていました。「君がモンティ・パイソンを褒めてくれたことは、大変に光栄なことだ。しかし、君が目指すべきは、モンティ・パイソンと同じことをやろうとすることではなく、それとは違うことをやろうとすることだ。それが君にとってのWind of changeだ」と。
とても深い意味のあるメッセージで、何度も何度もそのことについて考えました。そのことは、僕の人生の中でもとても大きな出来事でした。東京でなく、大阪の大学に進学先を選んだのは完全にその影響だったし、関西弁抜きで勝負できる演劇の道に進むのは、当然の結果でした。
ただ、遊気舎というアングラ劇団に入団したのには大きな意味はなくて、確か大学の先輩が所属していたからだと思います。20歳の僕は最年少の劇団員で、のびのびと楽しく、演劇にのめりこんでいきました。
ところが、入団して2年後のこと。劇団内で面白いと思うメンバーを引き連れて、新しい劇団を起こそうとしていたことが座長にバレまして、「ほな、お前が座長やれや」と、とんでもない役目を負わされることになってしまいました。
それからは、毎日が無我夢中です。演劇経験の浅い僕にとって、たくさんの経験を積むことが大きな課題でした。だから、他の劇団への客演は積極的に行ったし、多い年には7回くらいも本公演を行いました。僕の「大王」をはじめ、劇団員のキャラクターがお客さんに浸透し、ボケとツッコミのベタな笑いではない僕らの演劇が受け入れられていく土壌は、そんな無我夢中の中で少しずつ確かなものになっていきました。
遊気舎の座長になって7年目に劇団を退団したのは、僕にとって「プロ」になるための必要なステップでした。フリーの作家として、自分の劇団だけでなく、さまざまな劇団に作品を提供していく活動に入ったわけです。
だから、劇団そとばこまちを退団後、僕と同じようにいろんな劇団で活動していた川下大洋と結成した「Piper」は、劇団ではなく、自由なつながりで結ばれた演劇ユニットでした。その後、山内圭哉、腹筋善之介、竹下宏太郎というメンバーが加わっても、そのコンセプトは変わりません。メンバー5人が全員、劇団という集団活動で得られるメリットとデメリットをよくわかっていますからね。2007年に結成10周年をむかえ、今なお活動を続けられているのはそのおかげでしょう。
公演というのは、表現したいことがあるからこそ行うのであって、劇団という集団を維持するために行うものではないんです。そういう意味では、すべての公演が新しいことへの挑戦であり、同じことは2度とやらないつもり。これまでにも、2つの異なる劇場を同時に使い、観客を行ったり来たり移動させるようなことをやってみたり、舞台の上から客席にカメラを向けて一本の映画が出来上がるような公演をやってみたり、実験的なことにも積極的に取り組んできました。
今回の『THE LEFT STUFF』でも、単なる「よくできた脚本」で人をうならせるだけのことはしませんよ。海の底の閉鎖空間にとじこめられた7人の男女の話なんですが、お客さんの反応次第でストーリーを自在にあやつる、特殊な仕掛けをしようと思っています。ぜひ楽しみにしてください。
- Piper#8『THE LEFT STUFF』
Piperとして8回目となる最新作が、いよいよ上演される。あるプロジェクトのために集められた海底調査員候補たちが、観客と後藤ひろひとの手によって転がされる大実験コメディだ。Piperメンバーに加え、相武紗季、岡田義徳、川田広樹(ガレッジセール)の3人が加わった面々の奮闘ぶりに期待が集まる!
東京公演 大阪公演 2010年4月10日(土)~25日(日) 2010年4月29日(祝・木)~5月2日(日) 本多劇場 シアター・ドラマシティ 名古屋公演
2010年5月8日(土)・5月9日(日)
名鉄ホール広島公演
(アステールプラザ芸術劇場シリーズ)2010年5月11日(火) アステールプラザ 大ホール 仙台公演 2010年5月13日(木) 仙台市民会館 大ホール
取材・文/ボブ内藤 撮影/松谷祐増(TFK)











