初めて宝塚の舞台を観たのが、小学4年生のとき。衝撃でした。舞台の華やかさと、そこで演じている人たちのエネルギッシュな様子に引き込まれて何度も通うようになり、6年生のころには「私もこの舞台に立ちたい」と思っていました。
それからは、その夢に向かってまっしぐら。今思えば幸せな出会いでした。人生が始まったばかりの早い時期に、大きな目標を見つけることができたわけですからね。だから、夢をあきらめようと思ったことは一度もないんです。困難があっても、それを克服しようと、いつも努力し続けることができた。
例えば、男役というのは、所作から服の着こなしまで、ゼロから創り上げなくてはなりません。入団した当初、先輩たちのようなカッコよさを表現できなくて大いに悩みました。「どうやってやるんですか?」と聞いたところで問題は解決しません。そういう感覚的なことは、言葉では伝わりませんから、見よう見まねで「こうなのかな?」と試行錯誤していくしかありませんでした。
結局、自分なりの男役像はこういうものなんだ、と手応えを感じることができるまでには、だいぶ時間がかかりました。女性が男性を演じるというのは、それだけむずかしいことなんです。
宝塚歌劇団での日々をふり返ると、それまで所属していた月組から宙組への組替えが大きな経験になったと思います。
宝塚では、組によって独特の文化があって、それは長い年月をかけてそこに所属した人たちが作ってきたものなんですね。だから、別の組に所属が変わるということは、それまでのやり方とはまったく別のやり方を模索しなければならない。それは、とても貴重な体験でした。
というのも、そのおかげで気持ちをゼロにして、新しい大和悠河に目覚めることができたんですから。面白いものですね。いろいろな経験が逆に私を成長させてくれたんです。宙組に組替えした年は、星組に客演もしているんですけど、組のカラーを越えた「宝塚の大和悠河」として、自分にしかできないことをやればいいんだと思えるようになりました。
そんな風に、公演ごとに大きな課題があって、それをクリアするために努力してきました。同じ演目を再演するときも、決して同じようにはならないんです。前の公演でクリアした課題よりも、大きな課題が見つかったりする。ただそれは、自分が成長していることの証しだと思えば楽しくなってきますよね。宝塚での日々は、そうやってめまぐるしく、本当に充実した日々を過ごしてきました。
宝塚卒業は、私にとってやはり大きな出来事だったと思います。
卒業はいつかはやってくるものだと思っていましたが、宝塚が大好きで、心から好きだったからこそ、「今がそのとき」と悔いなく思えることができたのだと思います。
それが2009年7月のこと。本来なら、その後は半年くらい何もせずにボーッと過ごしてもいいかなとも思ったんですが、今回のミュージカル『カーテンズ』で舞台に立つというお話をいただいて、女優として新しい出発をしてみようかなと思ったんです。
この作品で私が演じるのは、ニキというかわいらしい舞台女優役。宝塚で演じてきた役とはまったく正反対の役柄。ただ、フリルつきのスカートを履いたときは、単純にうれしかったです(笑)。
男性と同じ舞台に立って演技をするということも、初めての体験。製作発表の席で、相手役の東山紀之さんの隣に座ったときは、女優になったような新しい気分でワクワクしました。
この4月にはミュージカル『戯伝写楽』への主演、7月には東宝のシアタークリエでの主演が決まって、そちらのほうも楽しみです。これから、いろいろな大和悠河の可能性を発現していきたいと思います。
- ブロードウェイミュージカル 「カーテンズ」
1年以上にもおよぶロングラン公演を達成したブロードウェイミュージカル『カーテンズ』の待望の日本初演が実現した。舞台の上で起こった殺人事件を、ミュージカルマニアのチョーフィ警部補(東山紀之)と若手女優役のニキ(大和悠河)が捜査していくという内幕もの。トニー賞8部門にノミネートされ、見事最優秀主演男優賞を受賞した名作が、どのように生まれ変わるのか、必見だ。共演は、マルシア、大澄賢也、芋洗坂係長、鳳蘭ほか。
東京公演 大阪公演 2010年2月6日(土)~24日(水) 2010年2月27日(土)~3月1日(月) 東京国際フォーラム ホールC 梅田芸術劇場 メインホール 名古屋公演 2010年3月7日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
取材・文/ボブ内藤 撮影/松谷祐増(TFK)










