【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.89】三宅 弘城『何を演じるにも変わらないのは、本気でやるということ』(掲載開始日:2009年12月3日)

三宅 弘城(みやけ・ひろき)
1968年1月14日生まれ。神奈川県横須賀市出身。88年に劇団健康のオーディションを受け、第6回公演『カラフルメリィでオハヨ~いつもの軽い致命傷の朝~』初演に出演。93年にはナイロン100℃の旗揚げに参加し、主要メンバーとして活躍。劇団☆新感線大人計画などへの外部公演も多数出演しており、阿部サダヲ宮藤官九郎と結成しているパンクコントバンド・グループ魂ではドラマーとして人気を博している。

初めて観た劇団健康の芝居に「これはパンクだ!」...と (三宅 弘城)

高校時代は、演劇にはまったく興味を持ってませんでした。体操競技部でみっちり練習をしたあと、地元の数少ないインディーズを扱うレコード屋さんに入り浸って、大好きなパンク音楽を聴く毎日。

バンドも組んだりはしていたんですけど、体育会系の部活の友達に趣味の合う仲間がいるはずはなく、ヘビメタ好きの友達に無理矢理頼んでパンクを演奏してもらったりして、盛り上がった気分はそれほど味わえませんでした。

体育大学への推薦入学の誘いを断って一般の大学に進学したのは、とにかくやりたいことを探したいという一心で。

そんなある日、芝居好きの友達に誘われて観たのが、劇団健康の第5回公演『ホワイトソング』の再演でした。ストーリーらしいストーリーのない芝居だったんですが、役者1人ひとりがハジけていて、「これはパンクだ!」と衝撃を受けたんです。

アンケートに「みのすけはすごい」という感想を書いたことは、いろんなところで話していますが、同封されていた劇団員募集のチラシに応募し、バク転といかりや長介のモノマネをして劇団員になってから、そのアンケートを再び目にすることになるんです。そのころ、劇団員がDMを発送する宛名書きをしていたんですよ。それで偶然、担当したアンケートの中に自分が書いたのが入っていたんです。...恥ずかしくなって、捨てちゃいました(笑)。

それが大学3年生のときのこと。男子校から男女共学の大学に進学しただけに学校が楽しくて、それまでの僕は熱心に授業に通う学生だったんです。ところがそれ以降、パッタリ学校に行かなくなるくらい、演劇にのめり込んでいきました。

新人時代からガムシャラで気がついたら20年以上も (三宅 弘城)

チラシに名前が載るようになったのはけっこう遅くて、最初の4年間はずっとガムシャラでした。

劇団健康から後にナイロン100℃を主宰するケラさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)は、脚本を書く段階から稽古場でエチュードをしながらセリフやストーリーを作っていくことがあるんです。役柄と状況設定を与えられて、即興で芝居をしていくわけですね。

演技の経験もまったくなかった僕としては、とにかく夢中でぶつかっていくしかありませんでした。当時の先輩からは、「どうせ何もできないんだから、チンコを出すくらいの気持ちでいけ」なんてアドバイスをいただいたのを覚えていますね(笑)。

だから、大学卒業を間近にして、いちおうは就職ガイダンスに顔を出したりはしたものの、就職する気にはなれずにそのまま演劇をやっていく決意をするんです。

そのことを親に電話で報告したとき、「親子の縁を切っても構わない」なんて切り出してしまったんですが、「(演劇をやることには)賛成はできないけれど、親子の縁まで切ることないじゃないか」って、泣かれました(笑)。

それで気づけば20年以上の月日がたっていて、現在に至る。ここまで続けられるものに出会えたことは僕にとって、とても幸運なことだと思います。

外部公演、そしてグループ魂...出会いには恵まれたと思います (三宅 弘城)

芝居を始めて10年くらいたったころから、いろいろな外部公演に呼んでいただきました。当たり前なんですけど、人によって演出の仕方は本当にそれぞれで、そのたびに刺激的な経験を積むこともできました。

でも、どんなときでも変わらないのは、本気でやるということ。特に舞台の場合は、お客さんの目の前で演じるだけに、気持ちが入ってるときとそうでないときの違いが如実に伝わっちゃうと思うんです。そもそも役を演じるということだって、嘘の上に本当を作り上げる作業ですよね。乱暴に言ってしまえば大の大人がごっこ遊びをしているようなもので、本気で臨まないと薄っぺらいものになってしまうから。

今回の『マレーヒルの幻影』も、100%の本気で臨みます。特に岩松(了)さんの作品は、観客としてだけではなく、役者としても「この舞台に立ちたい」と思わせてくれる作品で、それが実現したことはとてもうれしいです。

こうして考えてみると、出会いには恵まれていると思います。

ドラマーとしてグループ魂に加入したのも、たまたま宮藤(官九郎)くんが声をかけてくれたからで、音楽はもうとっくにあきらめていたのにこういう機会があるというのは面白いですね。高校時代は、趣味の合う仲間に出会えなかったから、今のメンバーと演るのはとても楽しいです。人生、何が起こるかわからないですね。

三宅 弘城さんへQ&A

Q:最近、面白かった本は?
A:漫画『ディアスポリス 異邦警察』。新宿を舞台にしたディープな物語で、すっかりハマっています。
Q:初めて感動したお芝居は?
A:20代前半のときに観た、新宿梁山泊の『人魚伝説』。不忍池の上のテントで上演されたんですけど、演出にも役者にも圧倒されました。
Q:もし俳優になっていなかったら?
A:憧れているのは、板前。役では消防士とか自衛隊員の制服が似合うと言われるんですが、板前服もけっこうイケてると思うんです。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

僕自身そうだったんですが、初めて演劇を観るという人は、演劇好きの人と観に行くといいかもしれません。演劇はテレビや映画とは異質な部分がありますから、かなりショッキングな体験になると思うんです。観終わったときに演劇好きの友達が隣にいれば、いろいろ話したり聞いたりできますしね。

これから演劇をしようと思っている人へ

いい役者になるために何をすればいいんだろうって考えると、なかなか答えが見つからないものですが、それは逆に、どんな経験も役に立つということでもあると思うんです。例えば、本を読んだり、ネットで動物がたわむれる映像を観たときに感じたこととかも、きっと役にたっているんじゃないでしょうか。感じることって、とても大事な気がします。

三宅 弘城さんの次回公演情報

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M&O plays プロデュース 「マレーヒルの幻影」

演劇界の鬼才、岩松了の新作がいよいよ上演される。1929年、大恐慌の年のニューヨークを舞台に、時代の波に翻弄される男女の運命的な恋愛を描いたフィッツジェラルドの名作『グレート・ギャツビー』に想を得た脚本に、麻生久美子ARATA三宅弘城荒川良々市川実和子松重豊ら豪華キャストが挑む。この絶好の機会を見逃すな!

東京公演 大阪公演
2009年12月5日(土)~12月27日(日) 2010年1月9日(土)
本多劇場 シアター・ドラマシティ
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取材・文/ボブ内藤 撮影/石井和広(TFK)

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