とにかく小学校の高学年のころには「大きくなったら何になりたい?」と聞かれるたび、「お笑いタレント!」と答えていたくらいですから、ずっと笑いは好きなんです。大学に進学して上京したときにも、その気持ちに変わりはありませんでした。
ただ、実際にその夢に向かって何をどうすればいいのかということについては、なかなかすぐに答えは出なかったんです。そんなある日、大学の演劇サークルで知り合った1年生の同級生同士で、「夏休みのヒマつぶし」のつもりで公演を打つことになるんですが、それが後のジョビジョバの活動につながるんだからわからないものですね。
第3回公演の『ジョビジョバ大旋風』は、僕が初めて脚本を書いて、演出した公演で、自分で稽古で考えたギャグが計算通りに笑ってもらえたときは、すごい興奮と手応えを感じました。妙な自信と勢いが自分の中に芽生えてきたのはそのころのことで、95年の『ジョビジョバ大ピンチ』(後に東映で『スペーストラベラーズ』として映画化された)がパルテノン多摩小劇場フェスティバルでグランプリになって賞金100万円をもらったときには、かなり確信に近いものになりました。
98年から6人のメンバー全員で大手の芸能プロダクションに所属することになるんですが、このときは誰ひとり反対するメンバーはいませんでした。メンバーの誰かがこんなことを言ってたのが印象的でしたね。「もし、この話を断ったら、オレたち30歳くらいになったときに解散していそうな気がする」って。僕は、その言葉にすごく納得したんですよ。
ジョビジョバを始めた当初、僕は「これから3回公演して、500人動員できなかったら辞めよう」って決めたんです。そしたら1回目からお客さんが500人を超えて、目標はどんどん高くなっていきました。そうやって、ひとつひとつの目標を超えてステップアップしていくのが、作品を創ってお客さんに笑ってもらうのと同じくらい楽しかったんです。弱小高校の野球部が、甲子園に勝ち進むみたいな部活ノリで。
そうやっていつしかテレビに出演したり、レギュラー番組を持てるようになったんですが、当然ながら、ずっと駆け上がってきた階段にも大きな壁が立ち上がってきて、それが奇しくも30歳のころでした。ジョビジョバは、活動を休止することになるわけです。
当時の自分をふり返ってみると、それまで全速力で走ってきただけに、壁にぶつかったときのダメージは、思った以上に大きかった。だからその後は、脚本家としてドラマの台本を書かせてもらったり、俳優としていろんな作品に出演させてもらったりしながらも、しばらくは自分から人を集めて舞台を作るようなことはないだろうと思ってたんです。
ところが2007年、放送作家で脚本家の福田雄一さんから、「一緒にコントやろうよ」と誘っていただいたとき、「あ、福田さんとならやれる」と思ったんです。
それがU-1グランプリを結成したきっかけ。久しぶりのコント創りはやっぱり楽しくて、最初の公演を終えたときは、「オレってやっぱり、自分でコント創って舞台で演じるのが好きだったんだよな」ってことを再確認させてもらいました。
U-1グランプリの2回目の公演『case02 「厨房」』では、ジョビジョバのメンバーの長谷川朝晴とも久しぶりに共演することができました。
実は、1回目のキャスティングにも福田さんに「ジョビの人、誰か呼ばないの?」って聞かれてたんだけど、変なこだわりもあって、「それは絶対ないです」って答えてたんです。だけど、公演を終えたときには、そんなこだわりはまったくなくなっていて、「アクターとして一緒にコントをやりたい人」という選択肢の中に、長谷川の名前が自然に入っていたんです。U-1グランプリを始めたことで、ジョビジョバから先に進めたという気がします。
今は、U-1グランプリで脚本、演出、出演をこなしながら好きな笑いを作るのも楽しいし、脚本家に徹して台本を書く仕事も楽しい。役者として出演する作品でも、「脚本家として、どう思いますか?」なんて感じの質問をされることがよくあるんだけど、「僕は役者として出てるんで、わかりません」って答えるくらい、自分の中では住み分けされてます。
ちなみに今回の『バンデラスと憂鬱な珈琲』は、相方の福田さんとの共同脚本で、僕が演出なんですが、実は舞台で演出のみで自分は出演しないって初めてなんです。企画が持ち上がったときから、かなり早い段階で「演出に専念する」ってことは決まってたんですが、最初はそれでも「やっぱり出たい」って気持ちになるんじゃないかなぁと思ってたけど、書き始めたらそんなことぜんぜんない。それどころか、この初めての感触にワクワクしてます。
キャストは堤真一をはじめ、高橋克実さん、小池栄子さん、村杉蝉之介さん、中村倫也さん、高橋由美子さん、段田安則さんと、これ以上考えられないような贅沢なメンバーですから、きっとすごいことができるんじゃないかと思うんですよね。ご期待ください。
取材・文/ボブ内藤 撮影/松谷祐増(TFK)











