【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.82】森山 開次『日本のダンスシーンを充実させるためいろいろなことに挑戦していきたい』(掲載開始日:2009年10月8日)

森山 開次(もりやま・かいじ)
1973年12月19日生まれ。神奈川県相模原市出身。21歳でダンスを始める。1999年以降、国内および海外のコンテンポラリーダンスの公演に参加。
2001年からは『夕鶴』にてソロ活動を開始。2005年に発表したソロ作品『KATANA』は、ニューヨークタイムズ紙に「驚異のダンサーによる驚くべきダンス」と評された。近年はダンス公演のみならず、演劇、ミュージカル、テレビ、映画など活動の場を広げて活躍中。

最初のきっかけは、大学2年生のときに観たミュージカルだった (森山 開次)

大学2年生のとき、音楽座という劇団の『マドモアゼル・モーツァルト』というミュージカルを観たのがすべてのはじまりでした。

当時の僕は、自分を表現する手段を探しながらも何もできず、そんな自分にはがゆい思いを抱いていました。事実、このミュージカルを観るまでは舞台とはまったく無縁で、生まれて初めて観たようなものでした。だから、華やかな舞台の上で多くの人が歌い、踊り、演技をする様子に心を動かされると同時に、「悔しい」という気持ちがわき上がってきたんです。

音楽座のオーディションが開かれたのは、その半年後のことで、迷わず挑戦することにしました。他の劇団のことを知らなかったというのもあるけど、とにかく僕を感動させてくれた、あの劇団の舞台に立ちたいと一途に思っていたんです。

音楽座はミュージカルの劇団だけに、オーディションでは歌と踊りの実技審査があったんですけど、歌の審査では夢のある美しい課題曲をメチャクチャに絶叫して歌ったのを覚えています。ダンスを踊るのはもちろん、そのときが初めてのこと。まわりの受験者の人たちは経験者が多く、ターンをまわるときに滑りやすいようなダンスシューズを履いていたんですが、僕は高校時代の体育館履きでしたから、うまくまわれなかったですね(笑)。

後に、審査をしてくれた座員の方に話を聞くと、そんな僕はやはり、異彩をはなっていたそうです。眉毛を細くして、角刈りツンツンヘアーのルックスはもちろんながら、周囲をにらみつけるような表情が印象的だったと語ってくれました。

ダンスの道に進んだのは僕にとっては自然な流れでした (森山 開次)

研究生になってからの毎日は、ひたすらガムシャラにレッスンに打ち込みました。それまでの僕は、小学生のときに体操のオリンピック選手になりたいという夢をあきらめてしまったのをはじまりにして、ひとつのことを成し遂げたという経験がまったくなかっただけに、必死でした。

特にダンスには力を入れていました。歌や演技の勉強も一生懸命でしたけど、新人にはセリフや歌のある役がまわってくる機会はめったになく、踊りのアンサンブルに使われることが多かったから。

もっとも、すぐにダンスを好きになったかというとそうではないんです。研究生はほとんどが女性だったんですが、彼女たちの前でタイツ姿で踊るのが最初はすごく恥ずかしくて、とにかく無様な真似をしないようにしようと考えるので精一杯でした。

それでも、少しずつ慣れていって、鏡に映る自分の姿を見る余裕が出始めてくると、ダンスという表現手段に魅力を感じるようになっていました。そうなると、「こんな風に動いたほうがカッコいい」と、体の動かし方を工夫するようになって、それがどんどん面白くなっていったんです。

ただ、最初に出演したのは、80ステージにも及ぶ長い公演だったんですが、毎回毎回、同じ踊りを同じように踊るのに違和感を感じるようにもなっていました。自分なりに踊り方を工夫したつもりなのに、「まわりと動きが合っていない」ということになってしまうんです。

2年後に劇団が解散してからは2年間、他の劇団に移るんですが、その後、ミュージカルをはなれてダンスの道に進んだのは僕にとっては自然な流れでした。

ダンスだけでなく、すべての経験が刺激的で、楽しい (森山 開次)

ミュージカル劇団をやめた後、さまざまなカンパニーを訪ねて、多くのダンス公演に参加しましたけど、ソロ公演を行えるようになるまでには、2年くらいの時間がかかりました。

ただ、自分の作品を作って、それを観ていただくというソロ公演は本当に楽しくて、『夕鶴』の公演を無事に終えたときは、「やりきった」という充実感でいっぱいでした。

その一方、課題もたくさん見えてきました。大きな課題は、日本のダンスシーンがまだまだ小さいということ。「昔と比べてダンサー人口は増えたけど、お客さんの数は増えない」という声が制作サイドから聞こえてくるような状況を、変えられないといけません。

そのためには、ダンス公演を続けることはもちろん、テレビや映画、それから演劇やミュージカルなど、場にこだわらずに活動して、森山開次という存在を多くの人に知ってもらうことが大事だと思うようになりました。雑誌『DDD』(フラックス・パブリッシング)で自筆イラストコーナーを担当しているのはその一環だし、NHK教育『からだであそぼ』(2009年より『あさだ!からだ!』)で内臓ダンスを踊ったりするのも、とても楽しい。

それから、2007年にはミュージカル『LUV』にいちミュージカル俳優として歌、芝居、ダンスで出演させてもらったときは、ミュージカル劇団出身だけに、感慨深かったですね。今回の『サロメ』も、僕にとっては非常に楽しみな公演です。演出の鈴木勝秀さんをはじめ、篠井英介さん、江波杏子さん、上條恒彦さんというすごい顔ぶれの中で、森山開次の存在感をどれだけ発揮できるのか、プレッシャーはありますけど全力投球で臨みたい。

演じることは、体を使った表現であるという点で、ダンスと共通点があります。これまで培ってきた表現力を駆使して頑張ります。

森山 開次さんへQ&A

Q:最近、面白かった本は?
A:ヘミングウェイの『老人と海』。道ばたに落ちているのを拾って読んだんですけど、引き込まれました。
Q:落ち込んだときのパワーフードは?
A:食べ物は何でも好きで、食べるたびに元気になります。強いていえば、夜中のプリンとアイスかな。
Q:もしダンサーになっていなかったら?
A:小さいころは、絵描きになりたいと思っていました。今でもよく絵を描くんですけど、心が落ち着きますね。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

ダンス公演にしても、演劇にしても、どちらも生身の人間が自分の体、声を使って表現しているという点が醍醐味ですよね。表現する人と、それを観る人との間には微妙な駆け引きがあって、観る側としては、どれだけ表現者に感情移入できるかで楽しみの度合いが大きく変わります。そのとき大事なのは、舞台の上で起こっていることに集中するということで、僕も他の人の公演を観るときは、そのことに気をつけて観ています。

これから演劇をしようと思っている人へ

僕は「鼓舞激励」という言葉が好きなんです。ひとりで踊っていると、ときどき「何のためにやっているんだろう」なんて考えてしまうことがあったんですが、「観てくれた人を鼓舞し、激励するようなことができたらいいな」と思うようになって、迷いがなくなったんです。だから、みなさんも自分の気持ちにピッタリくるような希望の言葉を持っていると、迷ったり、苦しかったりするときに役に立つかもしれません。

森山 開次さんの次回公演情報

「サロメ」の画像画像を拡大する
女方・篠井英介 × 演出・鈴木勝秀
シリーズ第三弾
翻案劇「サロメ」

"女方・篠井英介×演出・鈴木勝秀 第三弾"と銘打たれた翻案劇「サロメ」は、2007年秋からこのタッグで「欲望という名の電車」「サド侯爵夫人」と続けてきたシリーズの最終章。1892年にオスカー・ワイルドによって書かれた戯曲『サロメ』に、和楽奏を取り入れるなどして和のモチーフを盛り込んだ"翻案"を施した新しい試みだ。王役に上條恒彦、王妃役に江波杏子、そして預言者役にダンサー森山開次が扮する。舞台上に繰り広げられる幻想的な異空間を感じとれ!

東京公演 北九州公演
2009年10月19日(月)~25日(日) 2009年11月3日(火・祝)
東京グローブ座 北九州芸術劇場 中劇場
大阪公演 新潟公演
2009年11月10日(火) 2009年11月18日(水)
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
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取材・文/ボブ内藤 撮影/松谷祐増(TFK)

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