【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.77】紺野 まひる『宝塚の中にいても外に出てもカルチャーショックの連続でした』(掲載開始日:2009年9月3日)

紺野 まひる(こんの・まひる)
1977年4月12日生まれ。大阪府出身。1996年、宝塚歌劇団に82期生として入団。2002年に雪組娘役トップに就任する。同年9月に退団した後は、女優としてNHKの朝の連続テレビ小説『てるてる家族』のほか、ドラマ『小早川伸木の恋』、『白い春』(ともにフジテレビ系)映画『県庁の星』などで活躍。2009年秋には映画『アンを探して』、9月からは舞台『コースト・オブ・ユートピア』に出演する。

たくさんのチャンスをいただいて無我夢中の毎日でした (紺野 まひる)

4歳のころからバレエを習っていたんですが、だからといって表現の道に進むなんてことは考えていませんでした。中学生のころには、「早く辞めたいなぁ」なんて思ってましたから。

きっかけは、友達に誘われて観た、涼風真世さんと天海祐希さんの『ベルサイユのばら』(1991年)で、「私もあの舞台に立ちたい」と思ってからはまっしぐら。16歳で宝塚音楽学校に入学できたときは、心からうれしかったですね。

ただ、実際に宝塚の中に入ってみると、カルチャーショックの連続。400人を超える役者がいて、それを支えるスタッフを入れれば、本当にビックリするくらいたくさんの人が舞台を作っているんだなぁと驚かされることばかりでした。それと同時に、華やかな舞台を作る裏では、多くの人が競いあったり、お互い励ましあったりしながら、血のにじむような努力をしているんだということも知って、無我夢中の毎日でした。

だから、念願の初舞台を踏めたときは感無量で、もう「やったー!」という感じ(笑)。最初の口上では緊張して声がふるえそうでしたけど、後半でラインダンスを踊るときには、楽しくて楽しくて仕方がありませんでした。

ただ、初舞台のその年から早くも新人公演でヒロイン役に抜擢され、その後も大きなチャンスをいただくたび、超えなくてはいけないハードルの高さに四苦八苦。実際、入団1年目のヒロインというのは、想像以上に大変なことで、あのときは自分を客観的に見る余裕すらなかったし、そんな私を助けてくれた同期の仲間には今でも本当に感謝しています。

宝塚退団の決意は、自然に浮かんできた (紺野 まひる)

やっと地に足がついてきたなと感じられるようになったのは、入団して2年後のこと。ちょうど1カ月ほどのお休みをいただいたんですが、それまで毎日追われるような生活を送っていただけに、「もうこれで(宝塚を)辞めてもいいかも」とまで考えたんです。2年間でいろいろなことを経験して、それ以上、新しい経験をすることはないのではないかと思ってしまったんです。

だけど、「いや、私がやるべきことは、これからもまだあるはずだ」とすぐに思い直すことができたのはとても幸運なことで、休暇を終えて宝塚に戻ってからは、初心に返って1つひとつの舞台を楽しんで行こうという気持ちになれました。実際、そのころから宝塚以外のいろんな舞台を観にいったり、地元の友達と会って話をしたりして意識的にリフレッシュするようになったんですが、そのたび、ひとつの世界の中で小さくまとまっていた自分に気づかされたりして、気持ちの上で大きな変化がありました。

だから、7年目に絵麻緒ゆうさんのお誘いをいただいて雪組娘役トップになるまでの日々は、とても楽しかったですし、その年に絵麻緒さんとともに退団をするという決意も、自然に私の中で浮かんできました。

「役を演じる」ことは、「役を生きる」ということ (紺野 まひる)

宝塚を退団してからは、入団当時のカルチャーショックの日々が再びやってきました。役を演じるということでは同じなんですけど、宝塚の中と外ではすべてが大違い。

テレビで演じるときは、カメラの前に大勢の視聴者の方々がいると想像するだけでプレッシャーがありましたし、男性と共演するというのも初めての体験で、慣れるのに時間がかかりました。

宝塚で娘役を演じていたときは、理想の女性像に近づこうと毎回努力していたような気がしますが、宝塚の外で役を演じるときは、私と等身大の女性像を求められるときもあるし、逆に私とは180度も違うエキセントリックな役に挑戦しなければならないときもあって、振り幅が大きいんですね。

でも、それはとても新鮮で、「役を演じる」ということは、「役を生きる」ことにつながるんだという発見もできました。

映像の仕事とは別に舞台の仕事も続けてきて、2005年には久々のミュージカル『NEVER GONNA DANCE』にも出演させてもらいました。そして、今回の『コースト・オブ・ユートピア』は、退団後4本目の舞台出演になります。

舞台というのは映像と違って、何度も稽古を重ねて少しずつ役を作り上げていくんですけど、最近はその作業がとても楽しいんです。もちろん、この超大作ともいえる作品に出演するということには大きなプレッシャーがありますが、それを乗り越えた先ではきっと、貴重なものを得られるのではないかと、わくわくしています。

紺野 まひるさんへQ&A

Q:最近、ハマってることは?
A:大好きな洗濯。特にシーツやカバーなどの寝具を念入りに洗うと、ぐっすり眠れて気持ちいいんです。
Q:初めて感動したお芝居は?
A:菅野美穂さんと大竹しのぶさんが出演した『奇跡の人』。ふたりの演技のすさまじさに圧倒されました。
Q:もし女優になっていなかったら?
A:小さいころはケーキ屋さん。物心ついてからは、デパートの1階の美容部員になりたいと思っていました。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

私が宝塚を好きになったのは、舞台に行くことで、大好きなスターさんに「会える」という感覚が新鮮だったから。だから、好きな俳優を目当てにお芝居を選べば、きっと楽しめると思います。ちなみに『コースト・オブ・ユートピア』は、登場人物が70人以上、上演時間がぜんぶで9時間という超大作なので、「気軽に」というわけにはいかないでしょうが、人生に一度のイベントを体験するつもりで足を運んでください。

これから演劇をしようと思っている人へ

私がここまでやり続けてこれたのは、役を演じることが好きという気持ちがあったからだと思うんです。もちろん、苦しいとき、悲しいときには、その気持ちを持てなくなってしまうことがあるかもしれないけど、決して忘れないでほしい。なぜなら、そうした試練を乗り越えたあとには、演じることをさらに好きになれるはずですから。

紺野 まひるさんの次回公演情報

「コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ」の画像画像を拡大する
Bunkamura20周年記念特別企画 「コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ」

Bunkamura20周年のこの秋、トム・ストッパードの大作が、蜷川幸雄演出で上演される。2002年にロンドンで初演、2006年にはニューヨークで大絶賛されたこの作品は、激動の19世紀のロシアを舞台に、理想の社会を求める人々の30年以上に渡る闘いを描く壮大な歴史ロマン。登場人物は70名以上、3部合わせての上演時間が9時間の超大作で、日本公演が切望されていた。阿部寛をはじめ、勝村政信池内博之別所哲也紺野まひる京野ことみ美波高橋真唯佐藤江梨子水野美紀栗山千明とよた真帆毬谷友子麻実れいなど豪華キャストによる一大イベントの開幕だ!

2009年9月12日(土)~10月4日(日)
Bunkamuraシアターコクーン
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取材・文/ボブ内藤 撮影/松谷祐増(TFK)

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