【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.66】G2『僕にとって芝居はうまい酒を飲むための「行きすぎた趣味」のつもりだった』(掲載開始日:2009年6月18日)

G2(じーつー)
1959年生まれ。三重県出身。1991年~2002年、升毅との劇団「MOTHER」の活動を経て、現在は演劇ユニット「G2プロデュース」主宰。また、松尾貴史とのユニット「AGAPE store」や篠井英介らとのユニット「3軒茶屋婦人会」での活動、近年では北九州芸術劇場との共同製作や新橋演舞場での時代劇、ミュージカルの翻訳・訳詞など幅広く活躍中。この7月にはミュージカル『COCO』(演出・翻訳・訳詞)を手がける。

初演出の打ち上げで飲んだ酒はびっくりするほどうまかった (G2)

今から20年以上も昔の話です。当時、大阪でテレビのディレクターをしていた僕は、「売名行為」という劇団の公演を観に行ったんです。

その打ち上げに呼ばれた席でのこと。千秋楽を無事に終えて「よかった、よかった」とみんなが笑っている中、僕は「笑ってる場合じゃない。こんなのやってたらダメだ」とやっちゃったんですね。今思えばとんでもないことですけど、当時の僕は人間関係の摩擦を恐れない、傍若無人な男だったようです。

「だったらお前が演出をやってみろ」と升毅らが言ってきたのは、その数日後でした。あーだこーだ言った手前、「じゃあ、1回だけ」という約束で演出を引き受けた。これがすべてのはじまりです。

芝居の演出をやってみて感じたのは、「打ち上げの酒がなんでこんなにうまいのか」ということ(笑)。テレビのバラエティ番組の場合、打ち上げというのは番組が打ち切りになったときにするもので、決しておいしい酒ではないわけですよ。ところが芝居は、千秋楽でセットをバラしてしまえば、観客と役者とスタッフの頭の中にしか残らない。その潔さというか、すがすがしさが酒をうまくさせるんでしょう。

それで今度は、「もう1回、あの酒を飲ませてください」とこちらからお願いして、気がついたらそれがずっと続くことになっていました。

とはいえ、プロの舞台演出家になろうなんて気持ちはまったくありませんでした。芝居はあくまでうまい酒を飲むための手段で、僕にとっては「行きすぎた趣味」のつもりでした。

作品を面白くするためには突っ走れる。性格的に座長タイプじゃないんです (G2)

テレビのディレクターとして会社員生活をしながら芝居の演出もやってという生活は、升毅らと劇団「MOTHER」を立ち上げてからの11年間、ずっと続きました。

劇団を設立した直後は東京に転勤したこともあり、大阪と東京を行ったり来たりで大変でしたけどね。さすがに当時の上司に注意されたこともありましたが、「あなただって週末にゴルフに行ってるじゃないですか。それと何が違うんですか」なんて言い訳したりして。実際、演劇ではお金は儲からないというか、ほとんど持ち出しでやってるようなものだから、「副業」とも言えないですからね。

東京で生瀬(勝久)くんと再会して、「また『売名行為』みたいなこと、やりましょうよ」と誘われて「G2プロデュース」をはじめてからも、演劇は僕にとって「行きすぎた趣味」でした。

それが「本業」というか、「ライフワーク」みたいな意識になっていくのは、パルコ劇場での公演を手がけるようになってからでしょうか。頭の中で演劇が占める比重が、どうしようもなく高くなっていた。

でも、自分の劇団を作って座長になろうという発想は、最初からありませんでした。やりたいときにやりたいことができないんだったら、サラリーマンやってたほうがいいわけでしょ。そもそも僕は座長には向いてないタイプで、劇団の経営とか統率みたいな仕事は苦手なんです。その一方、作品を面白くするためには突っ走れるわけです。

やり続けることを目標にしないことでそのときそのときを楽しめるんです (G2)

松尾貴史とのユニット「AGAPE store」で決めているのは、「やり続けることを目標にしないようにしよう」ということ。だから、ユニット名のロゴは公演ごとに毎回変わっているんです。

篠井英介さんとのユニット「3軒茶屋婦人会」でも、僕のスタンスは変わりません。続けようと思わないことで、そのときそのときを楽しめるわけですね。

そんなわけで、ジャンルを問わず、いろいろな芝居を手がけてきました。

2006年6月に「OUR HOUSE」というミュージカル作品の演出を初めて手がけたときは、ミュージカルの世界の一員になるつもりでいろいろ勉強したし、それまで自分がやってきた方法論は封印して、ミュージカルの文法だけで演出したつもり。

だからこそ、その後の「The Light in the Piazza」(2007年12月)で再びミュージカルを演出するときは、逆に自由になれました。ミュージカルの演出と、ストレートプレイの演劇の演出の両面を生かすことで納得のいく作品をつくれたと思うし、まわりにも喜んでもらえたんです。

そうはいっても、レビューショーのような作品を演出する域には、まだ至っていなくて、やはり台本に魅力を感じる作品でないとミュージカルにはなかなか手は出せません。そういう意味で、今回4本目になるミュージカル「COCO」は自信を持って「面白い」と言える作品です。55歳でモードの世界を引退して、70歳でカムバックするココ・シャネルという実在の人物の圧倒的な存在感。「すげぇな、この人は」という感動が今の僕を動かしています。稽古が楽しくてしょうがないんですよ。

(五反田・NIRE's DELIにて)

G2さんへQ&A

Q:最近、面白かった本は?
A:湊かなえさんの『告白』。読み始めから読み終わりまで、まさに息をもつかせないという感じ。やられた!と思いました。
Q:落ち込んだときのパワーフードは?
A:カキフライ。好きなんで昔は食べまくっていましたが、最近は本当に疲れたときにおまじないのつもりで食べてます。
Q:最近、ハマってることは?
A:朝の散歩。自宅の近所をうろうろするだけなんですが、道ばたの植木鉢を見て人の営みを感じたり、空を眺めるのが新鮮。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

音楽好きの人は「ジャケ買い」ってよくすると思うんですけど、演劇でも「チラシ買い」っていうのはけっこう当たりが多いと思いますよ。実際、僕もチラシについてはいろいろ意見をすることが多いんです。チラシには、そこにたずさわる人たちが、その公演で何をやりたいと思っているのかが表現されているような気がします。

これから演劇をしようと思っている人へ

最近、感じるのは、演劇の世界を通過点として入ってくる人が多いなということ。ぶっちゃけて言えば、テレビとか映画に出たい人は、最初からそっちに行けということですね。演劇というのは、よほど好きじゃないとできないですし、好きになれずにこの世界に居続けようと思ったら、とんでもない遠回りをすることになります。

G2さんの次回公演情報

「COCO ~A Musical Play~」の画像画像を拡大する
ブロードウェイミュージカル COCO ~A Musical Play~

20世紀を代表するファッションデザイナー"ココ・シャネル"の一生を描いたミュージカルがブロードウェイで上演されたのは、1969年。アカデミー女優キャサリン・ヘップバーンを主演に迎え、大ヒットロングランを記録したにも関わらず、以降、このミュージカルが上演されることはなく、伝説の作品となった。その幻の名作がついに、日本の舞台に華々しく蘇る! 翻訳、訳詞を手がけたG2の冴え渡る演出に注目。鳳蘭湖月わたる岡幸二郎大澄賢也今陽子鈴木綜馬ら豪華キャストらの歌と演技に酔え!

東京公演 神奈川公演
2009年7月6日(月)~7月20日(月・祝) 2009年7月25日(土)
ル テアトル銀座 グリーンホール相模大野
浜松公演 盛岡公演
2009年7月28日(火) 2009年7月30日(木)
アクトシティ浜松大ホール 岩手県民会館・大ホール
福井公演 兵庫公演
2009年8月4日(火) 2009年8月6日(木)
福井市文化会館 兵庫県立芸術センター・阪急中ホール
鹿児島公演
2009年8月11日(火)
宝山ホール
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取材・文/ボブ内藤(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK)

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