【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.60】宅間 孝行『脚本家ではなく、演出家ではなく、今は俳優として満足する仕事をしたい』(掲載開始日:2009年5月7日)

宅間 孝行(たくま・たかゆき)
1970年7月17日生まれ、東京都出身。97年、現・劇団「東京セレソンデラックス」を旗揚げ。2001年から主宰と共に座付作家、演出家、役者をつとめる。脚本家としてもドラマ『花より男子』(TBS系)シリーズを手がけた他、劇団で上演した『歌姫』が連続ドラマになるなど大活躍。現在、フジテレビ『映画の達人2~エンド・クレジッツ~』、NHK連続テレビ小説『つばさ』に出演中。東京セレソンデラックス 公式モバイルサイトも配信中!

俳優を目指したのは、音楽と違ってひとりでできると思ったから (宅間 孝行)

それまで演劇にまったく興味のなかった僕が「役者になってスターになろう」と思い立ったのは、大学時代のバンド仲間が「就職するから辞める」と言い出したから。役者はバンドと違ってひとりでできるし、スターになればCDだって出せるじゃないかと単純に考えたんですね。

『ぴあ』に載ってる広告を頼りに、ある俳優養成所に入ったのが、24歳の年でした。

遅いスタートだったので、どんな小さなチャンスも見逃すまいと必死でしたが、そこで目の当たりにしたのは、厳しい現実。驚いたのは、テレビドラマの端役で目にするような40代、50代のベテラン俳優が、演じるだけでは食っていけず、バイトで暮らしているという話を聞いたときです。これは大変なところに足を踏み入れてしまったなと思いました。

また、知り合いの女優さんが芸能プロダクションのオーディションで「脇役でもキラリと光る存在になりたい」と言ったところ、「脇役で満足するようなヤツには、脇役さえつとまらない」と言われたという話を聞いたこともあって、僕はひとつの決断をしました。

この世界で10年たってモノになっていなかったら、きっぱりあきらめようと。

それからの毎日は、それこそ俳優として売れるためには何をなすべきかをつねに考え、実行することだけに集中してきました。

10年というタイムリミットがあったから、毎日が必死でした (宅間 孝行)

劇団を旗揚げしたのは、いろいろ考えた末に消去法で出てきた結論でした。

というのも、役者として数年間過ごしてみると、芸能事務所に所属したからといってすぐに売れるわけではないということがわかってしまったんです。別の道を行くならば、有名な劇団に所属して看板役者になること。しかし、経験もなく、アイドルやモデルばりのルックスを持たない僕がそんな有名劇団に入れるはずもなく、入れたからといって看板役者になることはもっと難しい。

残った選択肢は、自分で劇団を作ってそこの看板役者になること。その後、劇団が有名になっていけば、自然にスターになれるはず。

タイムリミットは、24歳から10年後の34歳。すでにそれほど時間は残っていなかったから、年間で3~5本の公演を打つほど死にものぐるいでした。

旗揚げ当初のメンバーが離れ、演出家と脚本家がいなくなったときも、「だったらオレが全部やる」と決断したのも、1年、また1年と月日がたっていくことへの焦りがあったからだと思います。

変化があらわれたのは、残りの時間があと2年というときでした。公演を観てくれたテレビのプロデューサーから「ドラマに出演しませんか?」と誘われたんです。翌年には昼のドラマの『貫太ですッ!』(フジテレビ系)のサブレギュラーに起用され、共演した石倉三郎さんに「お前はこの世界できっと食っていける。大変なときもあるだろうけど頑張れ」と励まされるようになっていました。

さらに脚本家としてもドラマや映画でいい仕事をさせてもらえるようになり、僕を応援してくれる人が劇的に増えていったんです。

今まで書いてきたすべての作品に同じような愛着があります (宅間 孝行)

その後も多くの出会いと励ましがあり、2008年には映画『同窓会』で監督デビューを果たし(脚本と主演も)、演出家としても充実した仕事をさせてもらえるようになりました。

ただ皮肉なことに、俳優としての自分は、当初の夢とは逆に、今ひとつパッとしないことに気づいたんですよ。脚本家の筆名をサタケミキオとしていたのは、俳優としての宅間孝行と区別しておきたかったからなんですが、いつの間にか、区別する必要のないほどそっちの名前が知られてしまったわけですね。2009年から役名も筆名も、宅間孝行で統一することにしたのは、そういうわけです。

だから今の僕のいちばんの目標は、俳優・宅間孝行として満足のいく仕事をすること。どうか応援してください(笑)。

それから、劇団のほうもおかげさまで、昨年の本公演『』で観客動員数が1万人超えの1万2600人に達しました。この作品は、その前の本公演の『歌姫』から続く再演なんですが、2009年の本公演でも『流れ星』を再演します。

ひとつの脚本を書き上げるには、一冊の大学ノートがメモでいっぱいになるほどの労力を要するんですが、それは小さな劇場でやる芝居のときも、テレビドラマで脚本を書くときも変わらないんですよ。そういう意味では、どの作品にも愛着があるんです。「名作再演」なんて、自分で「名作」を名乗るのは気恥ずかしいことですが、この作品を、より多くの人に観てもらいたいという気持ちでいっぱいです。

宅間 孝行さんへQ&A

Q:最近、ハマってることは?
A:酒好きの僕としては、最近、食べ歩きに凝るようになりました。「食い道楽」と言われることを目指してます。
Q:初めて感動したお芝居は?
A:大分つかこうへい劇団の『売春捜査官』。5~6年前にビデオで観て、いまだそれを超える演技に出会ってないです。
Q:もし、俳優になっていなかったら。
A:社長ですね。別に経営をしたいとか、そういうことではなく、ただただ社長になっていると思います。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

演劇って、どこか敷居が高かったり、面白くないものに対して「面白くない」と言えない空気があると思うんですけど、それはとてもよくないことだと思っています。そういう種類の演劇は、僕も嫌いです。だから、つまらない芝居を観たら「つまらない」と正直に言うことも大事だと思いますよ。その次、あるいはそのまた次にはきっと「面白い」と言える芝居に出会えるはずです。

これから演劇をしようと思っている人へ

続けていくことは簡単です。でも、演劇で食っていくことと、この世界のトップに立つことはとても難しいことを認識することがまず大事だと思います。そして、そのために何をなすべきかをつねに考える。そうすれば、バイトの帰り道、電車にするのではなく、走って体を鍛えようとか、芝居を観てから帰ろうとか、生活のちょっとしたことが努力に変わるはず。才能というものがあるとすれば、そういう努力ができるかどうかだと僕は思います。

宅間 孝行さんの次回公演情報

「流れ星」の画像画像を拡大する
2009年東京セレソンデラックス本公演 「流れ星」

「涙と笑いのウェルメイドプレイ」をコンセプトに、親しみやすく、わかりやすいストーリーと、ダメでオマヌケだが一生懸命生きる人たちを描いてきた東京セレソンデラックスの2009年本公演が決定した。演目は、『歌姫』、『』に続く不朽の名作『流れ星』。初演に引き続き出演となるうつみ宮土理と、新たな顔ぶれの山田まりやを迎えて待望の再演だ。笑って笑って最後にホロッとくるような、東京セレソンデラックスのツボにハマること請け合い!

東京公演 名古屋公演
2009年5月20日(水)~6月14日(日) 2009年9月20日(日)~9月23日(水)
新宿シアターサンモール テレピアホール
大阪公演
2009年9月30日(水)~10月4日(日)
イオン化粧品 シアターBRAVA!
  • この公演の詳細をみる
  • この公演へのコメントを読む

取材・文/ボブ内藤(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK)

新規ユーザー登録(無料)