【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.57】水野 美紀『そもそも私は、舞台女優になりたくてこの世界に入ったんです』(掲載開始日:2009年4月16日)

水野 美紀(みずの・みき)
1974年6月28日生まれ。三重県出身。87年にデビュー。ドラマ『踊る大捜査線』シリーズを始め、『ビューティフルライフ』、『女子アナ。』、など、テレビ、映画、CMなどで活躍するかたわら、舞台でも劇団☆新感線阿佐ヶ谷スパイダースPiperなどの公演に参加。2007年には脚本家・楠野一郎と演劇ユニット・プロペラ犬を旗揚げした。この4月にはNYLON100℃に初参加となる『神様とその他の変種』が上演される。

小学5年生のとき、漫画『ガラスの仮面』を読んで舞台女優を志しました (水野 美紀)

美内すずえさんの漫画『ガラスの仮面』を読んだのが小学5年生のとき。主人公の北島マヤにすっかり感情移入して、「あんな風に夢中になるものが私にもほしい」と思ったんですね。

つまり、私の最初の夢は、舞台女優になることだったんですが、ずいぶん遠回りをしてきましたね。中学1年生のとき、オーディションに応募してこの仕事をはじめてからは、舞台とは別の映像での表現活動が中心になるわけですから。

ただ、中学のときに友達に誘われて少林寺拳法を習ったり、その経歴を知った事務所のスタッフにすすめられて、倉田アクションクラブでアクションの修行を積んだ経験は、後に舞台で演技をするようになって、とても役に立っているんです。

倉田アクションクラブでは、股裂きにはじまる柔軟体操から、突き蹴りなどの基礎的な構えと動きを学び、マット運動、トランポリンなどを使って大技の練習をしていきました。

週に1度、マンツーマンのレッスンで、帰り道で歩くのも辛いほどシゴかれましたけど、そのおかげでアクションを必要とする映画やドラマに起用していただきましたし、2002年に劇団☆新感線からお誘いをいただいて念願の舞台に立つことができたのも、私がアクションのできる女優だったからだと思うんです。

もともと体育会系の私にとって舞台という場は水に合っていました (水野 美紀)

劇団☆新感線の『アテルイ』での初舞台は強烈な体験でした。カメラの前で演技するのと、目の前のお客さんを前に演技をするのとでは、何もかもが大違いで。

声の出し方、動き方からはじまって、いのうえ歌舞伎の独特の様式美を理解するので毎日が必死でした。用意ドンで一緒に稽古をはじめているのに、私だけ100メートルも後ろであえいでいる感じなんです。でも、稽古から本番まで、2カ月もの長い時間をかけて、大勢の人たちが力を合わせてひとつの作品をつくるという経験は、とても楽しかったし、私の演技の幅をものすごく広げてくれたような気がします。大変だったけど、それで尻込みしてしまうのではなく、もっとうまくなりたいと思ってました。基本的に体育会系の私にとって、舞台の仕事は性に合うものを感じました。

だからその2年後、『髑髏城の七人~アカドクロ』で再び公演に呼んでいただいたときは、とてもうれしかったですし、その後も舞台の仕事が増えていくのは自然の流れだったように思います。

そして、2007年には演劇ユニット・プロペラ犬を旗揚げすることになるわけですが、私と共同で主宰する座付き作家の楠野(一郎)さんと知り合ったのは、演劇とはまったく関係のない、ラジオ番組でした。その後、何度か連絡を取り合ううち、私のために書いたという2人芝居の台本を読ませてくれたんです。それが旗揚げ公演で上演した『マイルドにしぬ』なんですが、コミカルですっ飛んだキャラを私に振ってくるのは、楠野さんしかいないだろうなと思ったことが、プロペラ犬という演劇ユニットの旗揚げにつながりました。

演劇ユニットを旗揚げして、ますます舞台の魅力を感じています (水野 美紀)

プロペラ犬のコンセプトは、小劇場という自由な表現が許される場で活動する以上、劇場押さえからはじまって、スタッフ集め、出演者の交渉、チラシづくりまで、私と楠野さんのふたりで分担してやっていくこと。自由度が大きいだけに、こうした制作面の仕事も大事なんです。

2008年暮れの『ジャージマン』で2回目の公演を終えることができたんですが、土台づくりから公演にたずさわることによって、より大きな達成感を感じられるようになりました。

その結果、他の舞台に客演として出演するときにも、同じような喜びを感じることができるようになったのは、大きな収穫でした。プロペラ犬を旗揚げしたのが、デビューして20年。ようやく小学生のころの私の「夢中になるものがほしい」というものに巡り会えたんですね。遠回りしたけど、こうして振り返ってみると、すべての経験は無駄になっていなかったような気がします。

ところで、NYLON100℃の公演は以前からずっと見ていたんですが、今回、自分がその中に参加させてもらうということには、とても緊張しています。共演する犬山イヌコさん、みのすけさん、峯村リエさん、大倉孝二さんをはじめ、山内圭哉さん、山崎一さんといった芸達者な力のある役者さんたちの中で、どんな役割を演じることができるのかわかりませんけど、学ぶことは大きそうですね。むしろ、怖いもの知らずでのびのびと演じられるんじゃないかと自分自身に期待をかけています。東京を皮切りに、名古屋、大阪、広島、北九州と、地方公演をしていくのも修学旅行みたいで楽しめそうですね。

水野 美紀さんへQ&A

Q:最近、ハマってることは?
A:プロペラ犬の本チラシのため、染め物やぬいぐるにハマってきましたけど、第3回公演に向けて、今は発泡スチロール細工にハマっています。
Q:落ち込んだときのパワーフードは?
A:鍋です。オリジナルで、そのときの気分でいろんな具を入れます。落ち込んだときは、キムチ鍋がおすすめ。
Q:もし、女優になっていなかったら?
A:小学生のときは、獣医にもなりたかったんですけど、通訳者とか翻訳家には今でも興味があります。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

ひとつのお芝居を見に行くと、たくさんのチラシを渡されるはずです。これはすごく貴重なネットワークなんです。できればその一枚一枚に目を通して、もし自分の趣味に合いそうな公演があったら、見に行ってほしいですね。1回の公演で、数々の出会いの可能性があるわけで、それが演劇の面白さであり、楽しみだと思うんです。

これから演劇をしようと思っている人へ

お芝居って、好きになった瞬間からすべてが始まると思うんです。私が好きになったのは小学生のときでしたけど、ずっとその思いを持続し続けてこれたのは、つねにそのことにチャレンジしてこれたからだと思うんですね。だから、辛いことがあっても前向きに、「今のこの辛さは、きっと将来の糧になるんだ」と信じて頑張ってほしいです。

水野 美紀さんの次回公演情報

「神様とその他の変種」の画像画像を拡大する
NYLON100℃ 第33回公演 「神様とその他の変種」

ケラリーノ・サンドロヴィッチ主宰のNYLON100℃が33回におよぶ本公演を行う。しかも、今回は名古屋、大阪、広島、北九州にわたる全国ツアーともいえる大規模なプロジェクトだ。作・演出をつとめるのは、ご存じケラリーノ・サンドロヴィッチ
東京郊外の一軒家を舞台にした、子をめぐる親たちの物語。KERAによるナンセンス・コメディかつ緻密でスリリングな会話劇も期待できそう。
出演は、犬山イヌコみのすけ峯村リエ大倉孝二といったお馴染みの顔ぶれに加え、山内圭哉山崎一、そして水野 美紀が加わる。この一大イベントを見逃すな!

東京公演 名古屋公演
2009年4月17日(金)~5月17日(日) 2009年5月21日(木)
下北沢 本多劇場 愛知県勤労会館(つるまいプラザ)
大阪公演 広島公演
2009年5月23日(土)~5月24日(日) 2009年5月26日(火)
イオン化粧品シアターBRAVA! アステールプラザ大ホール
北九州公演
2009年5月30日(土)~5月31日(日)
北九州芸術劇場 中劇場
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取材・文/ボブ内藤(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK)

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