【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.55】渡部 豪太『「誰もが目が離せない」演劇は、そういうものを表現しているのだと思います』(掲載開始日:2009年4月2日)

渡部 豪太(わたべ・ごうた)
1986年3月8日生まれ。茨城県出身。中学生時代からモデルとして活動をはじめ、ドラマ『チェケラッチョ!!in TOKYO』『プロポーズ大作戦』(ともにフジテレビ系)などで注目をあびる。現在、『ゼクシィ』のCMをはじめ、2009年4月18日公開予定の映画『鴨川ホルモー』に出演しているほか、4月3日から東京グローブ座ほかにて上演される『夜は短し歩けよ乙女』で初舞台を踏む。

母の「今日は東京へ行きましょう」、そのひとことですべてが始まりました (渡部 豪太)

あれは、小学校卒業を間近にひかえたある日のことです。ちょうどその日は、これから通うことになる中学校を見学する日だったんですが、母が「今日は、東京へ行きましょう」と言ったんです。実は学校に行くのは気が重く感じていた僕にとってそれは「ラッキー」以外の何ものでもありませんでした。

原宿でオモチャを買ってもらい、さて次はどこへ行くんだろうと思っていたら、連れていかれたのは青山にあるビルの一室。僕と同年代の少年少女がたくさんいて、順番に従って4人くらいの大人の人たちを前にいろいろな質問をされました。つまりそれは、芸能事務所に入るためのオーディションだったんです。

あとで母に聞いてみると、そのころは茨城県に引っ越したばかりのころで、都心が恋しくなっていたらしいんです。それで、ときどき東京に通うための口実に、僕を事務所に入れたというわけです。

とにかくそれがきっかけとなって、CMの仕事をいただいたりするようになりました。

両親の間では、「すぐに仕事なんて入るはずない。きっかけがないようだったら、やめさせてもいいだろう」なんて話し合っていたそうですが、思っていた以上にいろんな仕事が入って、週末になると茨城県と東京を往復する生活がはじまりました。

最初は嫌だったけど、いつしか本気で「この仕事を極めたい」と思っていた (渡部 豪太)

その一方、中学生になった僕は、県内でも名門と言われていた柔道部に入部しました。指導する先生は、すごく怖いんだけど、熱くて、やしさくて、カッコよくて、「先生みたいに強くなりたい」と思わせるような人だったんです。

だから、モデルの仕事が入るたび、週末の稽古を休まなくてはならないのが僕にはとても不満でした。まわりの柔道部員がみんな坊主頭なのに、僕だけ仕事のために髪を伸ばしたままだったのも寂しくて。

そんなある日、『独立少年合唱団』という映画に出演することになったんです。全寮制中学を舞台に、合唱に情熱を燃やす少年たちの青春を描いた作品で、僕と同年代の出演者がたくさんいたんですね。

最初のころは、通うのが本当に憂鬱でした。だけど、3泊4日の地方ロケなどに参加して共演者のみんなと仲よくなるにつれ、だんだん意識が変わっていきました。というのも、同年代とはいえ、みんな芝居で自分を表現するということに真剣に取り組んでいるんですよ。

カメラの前でセリフをしゃべっている人だけでなく、その後ろで写っているときでも「こんな動きをしていたほうがいい」とかアイデアを出し合ったりして。撮影後にはしゃぎながら話をしたりすると、僕の知らない映画の話をしてくれて、「こんな世界があったのか」と目をひらかれたんですね。

それで、ある日の撮影の帰りの電車に乗ろうとするとき、母に電話をして、「僕、この仕事、本気でやるよ」と宣言していました。

人生で経験するすべてのことが役に立つ。この仕事は僕の天職かもしれない (渡部 豪太)

こうしてふり返ってみると、この世界は自分から求めて出会ったものではないけれど、僕にとってはとても幸運な出会いだったことをつくづく感じます。

もともと僕は活発な性格で、大人と物怖じせず会話をできるような子供でした。小学1年生のころから沖縄のお婆ちゃんの家にひとりで行ったり、人に道を聞きながら両親の職場を訪ねていったり、そういうのがぜんぜん平気だったんです。

高校を卒業してからは、カナダに1年間、留学もしました。英語が好きで、以前から海外で生活してみたいと思っていたからで、向こうで知り合った友達には「ゴータはカナダのどこで生まれたんだ?」なんて聞かれるほど、その環境に溶け込んでいました。

こういう性格が、この仕事にはすごく役にたつんですね。そういう意味で、僕は早くから天職と言える仕事に出会っていたのかもしれないですね。

「役を演じる」ことには、人生で起こるすべての経験が肥やしになります。だから今回、『夜は短し歩けよ乙女』で初の舞台を踏めることを本当にうれしく感じています。実はお芝居は大好きで、日ごろ、いろいろな方のお芝居を見させていただくんですが、面白い舞台を見るたび満足感を感じ、「あそこ(舞台の上)に立っていたかった」と思っていたんですよ。

街角に巨大スクリーンがあったとして、そこに映し出された映像には誰もが注目すると思うんですけど、隣で誰かがしくしく泣いていたり、あるいはケンカを始めたりしたら、そっちのほうに目が行きますよね。演劇で表現されることというのは、そういう類の「誰もが目を離せないもの」であると思うんです。僕自身、そんな場面をどう作っていくか、まだまだ試行錯誤ですけど、全力投球で作っていきたいと思っています。

渡部 豪太さんへQ&A

Q:最近、読んで面白かった本は?
A:司馬遼太郎さんの『新選組血風録』。血が騒ぎましたね。今の時代に生きる自分に何ができるか、触発されました。
Q:最近、ハマってることは?
A:1年半前に映画でベースギターを弾く役を演じて以来、ギターにハマっています。近所の公園で弾くと気持ちいいんです。
Q:初めて感動したお芝居は?
A:ニューヨークのブロードウェイで見た『マンマ・ミーア』。劇場に入った瞬間からその世界観に魅了されました。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

僕自身がお芝居を見に行くときは、許される限り、ラフな格好をしていきます。で、席に座ったら、ベルトの穴をひとつかふたつ、ゆるめます(笑)。スウェットで行くときもありますね。つまり、演劇を見ておなかを抱えて笑ったり、拍手したり、泣いたりすることで、そんな観客の反応が舞台の上の俳優さんにも影響を与えたりするのが演劇の面白いところだと思うんですよね。

これから演劇をしようと思っている人へ

これは僕自身がつねに自分を戒めていることですけど、それは、目に見えるものを当たり前と片づけないこと。物事を鵜のみにしないということ。自分が物事をどう感じたのかを考えるということでしょうか。子供のころ、いろいろなことに「なんで?」と疑問を感じていたときの姿勢を忘れたくないですね。日々のモットーは、「毎日が不思議いっぱい」。

渡部 豪太さんの次回公演情報

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「夜は短し歩けよ乙女」

森見登美彦の人気小説が舞台化される。これが舞台初挑戦となる渡部豪太の役柄は、田中美保扮する「黒髪の乙女」に恋し、ストーカーばりのアタックをしかける「先輩」。ふたりの恋が巻き起こす珍事件は、ベンガル辺見えみり綾田俊樹らが演じる奇奇怪怪な登場人物たちによって、運命の大転回へ――。京都を舞台に繰り広げられるキュートで奇抜な恋愛物語だ。

東京公演 仙台公演
2009年4月3日(金)~4月15日(水) 2009年4月21日(火)
東京グローブ座 電力ホール
大阪公演 京都公演
2009年4月18日(土) 2009年4月23日(木)
シアタ-・ドラマシティ 京都芸術劇場春秋座
名古屋公演
2009年4月29日(水・祝)
名鉄ホール
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取材・文/ボブ内藤(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK)

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