【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.35】篠原 ともえ『役を演じるってモノ作りの楽しみに似てるよね』(掲載開始日:2008年11月6日)

篠原 ともえ(しのはら・ともえ)
1979年、東京都生まれ。
95年に歌手デビューし、シノラーブームを巻き起こす。以後、タレント活動のかたわら、作詞作曲、衣装やCDジャケットの制作、ファッションショーの企画プロデュースなどを手がける。近年は舞台の活動も精力的に行っており、2000年に作詞・作曲・衣装デザインを手掛けたミュージカル『天使からの招待状』で初舞台を踏んでからは、様々な役柄にチャレンジしている。

元気で明るい私をアピールするのは、恥ずかしい気持ちの裏返しなんですよ(篠原 ともえ)

こう見えても私、小学生のころまで人見知りの激しい子だったんです。人前に出るだけで緊張してしまって、少しも話ができなくなってしまうような、おとなしい子で。

そんな私を心配したお母さんが、バレエを習わせてくれまして、そこで初めて、人前に出る快感を知ったんです。発表会で素敵な衣装を着て、お化粧をして、「ああ、きれいねぇ」と言われて拍手をもらうという経験が私をガラリと変えたんです。お母さん、すごい。

芸能人になりたいという夢が芽ばえたのは、そのすぐあとのことで、いろんなオーディションを受けました。ある日、ライブを見にいったとき、ギャーギャー騒いでいる私に変なオジサンが話しかけてきたんです。「お前、面白いな。芸能人に会えるから、うちの会社に遊びにこいよ」と誘われて、「うん、会うぅ」なんてノリで行ってみることにしたんです。

で、その芸能人というのは石野卓球さんで、「会社に遊びにいく」というのがデビューのためのオーディションだったことに気づくんですけどね。あとから人に聞いたところによると、そのときの私は真っ赤なホッペに制服姿で、みんなの前に立たされた途端、「おなかすいた~」って言ったんだって。面白がったオジサンたちが出前をとってくれて、床にペタンと座って力うどんをズルズル食べはじめた私は「やっぱり面白い子だ」ということで、その場で合格になったとか。だけど私自身、そのときのことはあまり覚えてないんですよ。すごく緊張していたから。

ただ、元気な自分をアピールしたり、明るくふるまったりするのは、緊張したり、恥ずかしいときの裏返しみたいなところがあるので、私がそのオーディションで力うどんを食べたっていうのは、たぶん事実なんだと思います。

人前で自分を表現することと、モノ作りすることを両立させたい(篠原 ともえ)

人前でおしゃべりをしたり、歌をうたったりするのはすごく楽しくて、デビューしてからの日々は、夢みたいに楽しかった。その一方、小さいころからものを作ったりするのも大好きで、芸能界の仕事をするかたわらで、曲を作ったり、絵を描いたり、洋服をデザインしたりするのも続けていました。

人に見られることと、ものをクリエイトすることは作業的にはまったく別物なんだけど、それを両立する女性に私はあこがれているんです。つまり、人前に出て、わーっと元気を発散して楽しむこともできるんだけど、一方では部屋にこもってモノ作りに没頭することもできる女性。実際、何かモノ作りをしているときは、なぜか言葉使いがしっかりするみたいで、その両方があって初めて私の中でうまくバランスがとれるんです。

女優として役を演じるという体験は、私にとってはそのふたつの面がないとできないことなんですね。

だから、デビューして3年目くらいにドラマに出演させてもらったときは、元気で明るいキャラから離れられなくて、「自分じゃない誰かになりきって、台本通りのセリフをしゃべる」という行為がすごいストレスになっていたんです。

だけど、役を演じるということは、「人前に出て自分をアピールする」という面と、「役になりきることで登場人物をクリエイトする」というふたつの面があるんだって気づいてからは、それを楽しめるようになっていきました。

その大きなきっかけは、岩松了さん演出の『月光のつゝしみ』(2002年12月、竹中直人の会第9回公演)に出演させてもらったときにやってきました。

自分とはまったく共通点のない人物を演じることが、楽しくなってきた(篠原 ともえ)

岩松さんの舞台って、何度見ても頭の中が「?」でいっぱいになるんですけど、私がイチイチ「なんでこの人はここでこんなセリフを言っちゃうの?」なんて正直に聞くものだから、逆に面白がられたんでしょうね。「それは、大人になったらわかるんだよ」なんてからかわれたりして、楽しみながら稽古に臨むことができました。

とはいえ、そのとき私に与えられた役が人妻で、自分の中にまったく共通点のない女性だったので最初は戸惑いました。

だけど、今思えばそれが逆によかったのかもしれません。

それまで私は、繊細だったり、弱かったりする自分を人に見せることに強い抵抗を感じていたんだけど、役を演じることで、あえてそういう自分を人前にさらしてみることに面白さを感じたんです。

最初のころ、岩松さんに「この場面で泣ける?」と聞かれて、「えーっ、泣けないよぉ」なんて言ってた私が、台本をじっくり読んで、自然に涙を流していたりするんですから、それはすごく大きな進歩でした。岩松さんって、ホントにすごい。

それからは、いろんな演出家と出会って、いろんな役を演じたいなんて思うようになって、すっかりお芝居にハマっちゃいました。

今回のお芝居も、自分にまったく共通点のない、江戸時代の花魁を演じるということで「怖いなぁ」と思う反面、自分さえ知らなかった私の新しい一面を見ることができるんじゃないかと思って、とても楽しみなんです。

ちなみに私はお芝居に出るとき、稽古風景などの写真を撮って、アルバムにするんです。1カ月くらい、同じメンバーと頻繁に顔を合わせて舞台を作るわけですから、たくさん思い出ができるじゃないですか。それを記録しないなんてもったいないなぁと思ったんですね。今回もきっと、楽しいアルバムができるはずですよ。

篠原 ともえさんへQ&A

Q:最近、面白かった本は?
A:『井上ひさし全芝居』。井上さんは天才だと思いました。お会いできたら、サインをもらおうと思ってます。
Q:最近、ハマってることは?
A:日本舞踊。先生に「クニャクニャしないっ」とか、「何、そのピンクの足袋は!」とか怒られながら頑張ってます。
Q:初めて感動したお芝居は?
A:蜷川幸雄さんの『四谷怪談』。その後、別の機会でお会いしたとき、「あっ、蜷川幸雄だ」って言っちゃいました。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

私は、元気になりたいときは明るいお芝居を見にいくし、独特の世界にひたりたいと思うときは静かなアート系のお芝居や、人間のダークな面を描いたお芝居を見にいくんです。お芝居って、目の前で人が演じるだけに、その独特な雰囲気に圧倒されちゃう人もいるかもしれないけど、そうやって気分に合わせて見にいくお芝居を選べば、きっとものすごいパワーを与えてくれるものだと思うんです。

これから演劇をしようと思っている人へ

自分らしくいるって、すごくむずかしいことだなって思うんです。「本当の自分」を意識すればするほど、それは遠ざかっていくものですからね。それで、「自分には個性がない」なんて悩んだり...。そういうときは、あえて何も考えず、目の前のことに一生懸命打ち込むことが大切だと思うんです。そうやって無心で頑張ることで、「本当の自分」が近づいてくることもあるんじゃないかって、最近思うんですよ。

篠原 ともえさんの次回公演情報

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「表裏源内蛙合戦(おもてうらげんないかえるがっせん)」

1970年、テアトル・エコーのこけら落し公演を飾った井上ひさし30代のエネルギッシュな作品『表裏源内蛙合戦』に、シアターコクーン芸術監督、演出家・蜷川幸雄が挑む! 
「エレキテル」の発明や「戯作」執筆など、江戸社会において「異端」「奇人」と噂された天才・平賀源内の人生を歌、踊り、そして言葉遊びを駆使して描ききる。上川隆也勝村政信高岡早紀豊原功補六平直政といった豪華出演陣の中で、我らが篠原ともえはどんな活躍をしてくれるのか!?

東京公演 大阪公演
2008年11月9日(日)~12月4日(木) 2008年12月9日(火)~12月14日(日)
Bunkamura シアターコクーン イオン化粧品シアターBRAVA!
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取材・文/ボブ内藤(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK)

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