【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.32】野村 佑香『トコトンまで悩んだ末に選んだ道は、絶対に後悔しない道だと思う』(掲載開始日:2008年10月16日)

野村 佑香(のむら・ゆうか)
1984年3月20日生まれ。神奈川県横浜市出身。
3歳からモデルとして活動し、10代にかけてジュニアアイドルとして人気を博す。2002年、成城大学に一般入試で入学し、学業に専念するも、07年1月の映画『子宮の記憶/ここにあなたがいる』で女優業に復帰。以後、映画、テレビ、舞台に精力的に活動している。
公式ブログ「nomulabo」
http://nomurayuuka.cocolog-nifty.com/

撮影のあとに人形をもらったことが 3歳の「初仕事」の楽しい思い出(野村 佑香)

初めてこの世界でお仕事をさせていただいたのは、3歳のころなんですけど、そのときのことはちゃんと記憶に残っているんです。CMの撮影でしたが、終わったあとに金太郎と桃太郎の人形をいただきまして。ずいぶん大きくなるまでその人形は大事にしていたくらいで、とても印象が強いんですよ。

ただ、やはり3歳ですから、それが「仕事」という実感はほとんどなかったと思います。

自分の中で「演じる」ということを「仕事」として意識するようになったのはそれからだいぶたってからで、11歳のときにテレビドラマ『木曜の怪談』(フジテレビ系)に出演させてもらったころでした。このドラマはシリーズ化して、足かけ1年半にも及ぶ長い期間、出演者として制作にたずさわったわけですが、同年代の共演者の人たちと子供ながらに「このセリフはこんな風にしゃべってみようよ」とか、「こんな動きをつけたら面白いんじゃない」なんて提案したりしていまして、それが形になるのがとても面白かったんですね。

怖い話のドラマだったので、山奥の廃校とか病院とか、遠いところにロケに出かけたりすることも多く、朝の5時に集合して移動するなんてことがよくあって、決して楽なお仕事ではなかったと思うんですが、今思い返してみると、楽しい思い出ばかり。思うに、プロデューサーや監督を含め、たくさんのスタッフの方々、そして出演者の方々が集まって、「いいものを作る」という目標に向かって力を出し合う、そういう部分にやりがいを感じたのかもしれませんね。

仕事を休業する決意をしたのは、大学が未知の世界だったから(野村 佑香)

私にとって最大の転機がやってきたのは、高校卒業を前にして進路を決めるときで、大学に進学するか、それともこのまま仕事を続けるか、ずいぶん迷っていろいろ考えたんです。

いろんな人に相談して意見を聞いたし、大学がどういうところなのか、情報を集めて検討したり、自分なりにできる限りのことをした結果、進学という道を選びました。その理由は、「大学はいつでも入学できるけど、今だからこそ経験できることでもあるんだよ」という助言も大きかったですが、私にとって大学という場所が、まったく未知の世界だったことも背中を押した理由のひとつ。

というのも、それまでずっと携わってきた「仕事」の世界では、作品ごとにスタッフ、出演者が集まって、次の作品ではまた別の人たちと出会う、そんな日々の連続なんですね。それがこの仕事の面白さでもあり、一度出会った人との縁はずっとつながっていくものなんですが、大学に通うという経験は、ある意味それとは逆。高校や地元の友達とは違う仲間と席を並べることは確かですが、4年という長い期間、一緒に勉強するわけですからね。

それだけに、大学ではとても収穫の多い日々を送ることができました。

今まで私は、「仕事」を通じていろんな経験を積ませてもらってきたつもりだったけど、知らない世界はたくさんあるんだなと心から実感しましたよ。例えば、アルバイトするために履歴書を書いたとき、「受かるかな」「受かったとしても、ちゃんと働けるかな」なんて考えると、すごくドキドキしたんです。早い人は、高校生からバイトしてる人もいると思うんですけど、「すごいなぁ」って素直に尊敬しちゃいます。

復帰後の私は、ハングリー精神が旺盛になりました。(野村 佑香)

そんな私も、同級生が就職活動をはじめ、卒論の準備に追われるような時期になると、再び将来のことについて、考えるようになりました。ただ、このときはそれほど迷いはありませんでした。「演技を通じて自分を表現したい」という強い気持ちを感じられたから。

だから、「仕事」に復帰してからの私と以前の私を比べると、ハングリー精神はずっと大きいと思います。一つひとつの仕事がとてもありがたいし、それに挑戦することで自分を高めていこうという意識が芽えてきました。

初めて舞台に出演したのは、大学1年生のときで、劇団☆新感線の『スサノオ~神の剣の物語』という作品なんですけど、最初はぜんぜんできなくて。演出家の、いのうえひでのりさんの言うことを忠実にやろうとすればするほど、役をつかめなくなっていく。だけど、格闘する毎日の中で、舞台のライブ感というものをなんとなく理解できたんでしょうか、「お客さんの反応を見て、自分なりにセリフをアレンジしたりしてもいいんだ。逆にそれが舞台の魅力なんだ」ということをつかめた気がして、途中からすごく楽しんで演じることができたんです。

もちろん、その楽しみ方を見つけたことはゴールではなくて、「そういう舞台の上で、どんな表現ができるか」という課題のひとつなんですけどね。でも、その課題が見えたということは私にとって、大きな前進なんです。

おそらく私はこれからも、悩んだり、壁に突き当たったりをたくさん経験するんだろうと思いますが、それはきっと無駄にならないと思います。なぜなら、トコトンまで悩んだ末に選んだ道は、絶対に後悔しない道だと思うから。

野村 佑香さんへQ&A

Q:最近、面白かった本は?
A:井上ひさしさんの『ことばを読む』。言葉へのこだわりに感心しましたし、極上の本が紹介されていて、勉強になりました。
Q:最近、ハマってることは?
A:『エヴリデイ・エヴリナイト』の本番4カ月前から三味線を練習しているんですけど、これがむずかしくて(笑)。
Q:初めて感動したお芝居は?
A:藤原竜也くんが主演した『身毒丸』(1997年)。独特の世界観に浸りきって、終演後にも席から立てなかった。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

何が起こるかわからないのが舞台の魅力ですから、見てみないとその面白さはわからない。とにかく一歩を踏み出すことが大切です。ちなみに2008年6月、私は新国立劇場で上演された『鳥瞰図』に出演したんですが、お芝居を見たことのない地元の友達が見にきてくれて、以来、演劇ファンになったという話を聞いたときはとてもうれしかったです。演劇って、一度その面白さを知ると、ハマってしまうものなんですよ。

これから演劇をしようと思っている人へ

私なんかがこんなことを言うのはおこがましいなと思いつつ、お芝居はもちろん、映画や美術など、いろんなものを見るといいのではないかと思います。そして、他の人の批評に流されるのではなく、それを見たときの感動を素直に人に伝えられるということが大事な訓練なのではないかと。表現されたものから感動を受けることができるということは、人にも感動を与えられるということにつながると思うんです。

野村 佑香さんの次回公演情報

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「エヴリデイ・エヴリナイト」

演芸場を舞台に、女の子3人の三味線バンドが活躍する大エンターテインメント! "恋"に"仕事"にてんてこまいの3人の女の子の活躍をご覧あれ。野村佑香さん、加藤理恵さん、松永かなみさんの熱の入った三味線生演奏は、見もの聞きもの。そのほか、立川談奈さんの落語や、WAHAHA本舗のコンビ・パー&ナーの漫才など、盛りだくさんの出し物がつまってます。

東京公演
2008年10月17日(金)~20日(月)
「深川江戸資料館」小劇場
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取材・文/ボブ内藤(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK)

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