- 田中 麗奈(たなか・れな)
- 1980年5月22日生まれ。福岡県出身。
98年の映画『がんばっていきまっしょい』で主演デビュー。ここでの演技が評価され、キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞、日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の栄えある賞を得た。以後、映画やCM出演などを中心に活動してきたが、デビュー10周年をむかえた本年2008年は、TBS系の連続ドラマ『猟奇的な彼女』に初主演するなど、新たなことに挑戦している。
私が「女優になりたい」と思ったのは5歳のころ。特に好きだったのは中山美穂さんで、『ママはアイドル!』などのドラマは、まだ小学生になったかならないかというころなのに、夢中で見てました。
たぶんそのころは普通の女の子がテレビを見て、普通に芸能界の華やかさに憧れる程度の決意だったと思うんですけど、今になって思えば、女優という職業について自分を表現している姿に「自立した女性の姿」を見て憧れたのかもしれません。あと、母が若いころに女優を目指していた時期があったそうで、その影響もあるのかな。
小学校を卒業してすぐ、地元の福岡の演劇スクールで受けたのが初めてのオーディションだったんですが、確か「歌をうたって」と言われて、すごく恥ずかしかったのを覚えています。でも、審査員の人に思いを伝えたいという気持ちで最後まで歌いきって、子供ながらに頑張ったつもり(笑)。
それがきっかけでその後、九州を中心にさまざまな広告の子役モデルをやらせてもらうことになりました。ですが、こういうお仕事で求められるのは、カメラの前で子供っぽくニコニコ笑ったり、無邪気にふるまったりすることなんでしょうけど、私はそれがすごく苦手だったんです。 「ハイ、麗奈ちゃん、笑って~」なんて言われても、うまく表情が作れなかったりすることもあって、それが「将来の自分の仕事」という実感がもてるようになったのはだいぶ後になってからのことですね。
その後、「東京に出て、女優になるための一歩を踏み出したい」という気持ちは強くなっていき、中学卒業と同時に上京したいと思っていたんですが、周囲に説得されて高校までは地元の学校に通うということになりまして。
そんな中、高校卒業を目前にして受けた映画『がんばっていきまっしょい』のオーディションが私に大きな転機をもたらしてくれました。私に「演じる」ということのチャンスを与えてくれた、大事な作品です。 だけど、いざ撮影に入ってみると、ボロボロで、監督には毎日シゴかれていました。
「頑張らなきゃ」って気持ちはすごく強かったんですよ。だけど、一体、何をどう頑張っていいのかわからなくて、その思いが空回りしてしまうんです。とにかく毎日泣いてましたね。
でも、そんな辛さを乗り越えて最後まで演じることができたのは、やはりその「女優になるんだ」という思いの強さがあったからだとも思うんです。演じる技術はないからこそ、気持ちだけでも負けないよう頑張り続けようと。監督に言われてできなかったことはキチンとメモしておいて、明日にはきっとできるようにしておこうと、無我夢中でしがみついていた感じ。
そんな辛い思い出だけではなくて、撮影場所の川に浮かんだワカメやゴミを、カメラを止めてみんなで掃除したり、スタジオに組まれたセットがだんだんとできあがっていく様子を見たり、映画ができあがっていく様をつぶさに観察できたのはすごく面白かったんです。
演技のほうも、少しの変化で同じセリフがガラリと印象を変える瞬間がわかるようになって、だんだん楽しんで演じることができるようになっていきました。
それだけに、映画デビューの演技がさまざまなところで評価されたことは、何よりもうれしい出来事でした。
気がつけば、それがもう10年も前なんですね。
振り返ってみると、強い女性をふるまって必要以上に強がっていた時期もあったし、逆にまわりに影響されすぎて自分を失っていた時機もあったし、いろんな経験をして放浪してきたというイメージがあります。
だからといって、デビュー10周年なんだから、もういいかげん落ち着かなきゃという気持ちはまったくなくて(笑)。むしろ、新しいことにチャレンジしたいという気持ちがどんどん強くなっています。
今年の春に『猟奇的な彼女』で初の連続ドラマ主演に挑戦したのはその試みのひとつ。
ひとつのカメラでワンシーンを丁寧に撮影していく映画と違って、テレビドラマはいくつものカメラを同時に回して、俳優たちの演技の流れにそって場面を作っていくんです。それがとても面白くて、刺激的な体験でした。
『思い出トランプ』で舞台に初挑戦してみたいという気持ちになったのも、その体験が大きく影響しているのかもしれません。
でも、映画やテレビだと、カメラに写っていないときは演技をしなくていいけど、舞台の場合は板(ステージ)に立っているときはつねに役を意識していなければならないわけで、さらにハードルの高い挑戦になりそう。
プレッシャーがないかといったら嘘になるけど、今は新しい経験を前にして、とてもワクワクしています。
取材・文/ボブ内藤(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK) ヘアメイク/小林友香 スタイリスト/高見佳明











