- 宮藤 官九郎(くどう・かんくろう)
- 1970年7月19日生まれ。宮城県出身。91年より松尾スズキ主宰の大人計画に参加。俳優として活躍するとともに『ウーマンリブ』シリーズでは自ら作・演出も手がける。04年、『鈍獣』で第49回岸田國士戯曲賞受賞。テレビドラマ、『タイガー&ドラゴン』、『うぬぼれ刑事』などの脚本を手がける他、映画監督、構成作家、ミュージシャンなどさまざまな分野で活躍している。現在、脚本を手がけるドラマ『11人もいる!』がテレビ朝日にて放送中。来年3月には、大人計画本公演『ウェルカム・ニッポン』に出演。
高校まで演劇というと"演劇部"ぐらいしか見たことがなかったので、説教臭いテーマがあって、それをみんながキモチ良さそうに大きな声で叫ぶみたいな印象で、ちょっと恥ずかしいものと思っていたんです。正直まったく興味はなかった。ただ、カルチャーを扱っている雑誌を見てお笑いのにおいがする劇団は知っていました。写真を見て"面白いな"と。その後、大学に入ってから、興味を持っていた劇団の公演を見るようになったんです。一番最初の衝撃は、WAHAHA本舗。演劇って黙って座ってみるもんだと思っていたから、客いじりがあったりハプニング的な要素がスゴく楽しいなと思ったんです。とはいえそれでもそれほど演劇には興味を持たないまま、どちらかというといずれTVの構成作家になりたいと思っていましたね。演劇に触れたきっかけは、大学2年の夏休み。学食に貼られた公演チラシです。WAHAHAの村松(利史)さんプロデュースで松尾(スズキ)さんが脚本を書いていた『神のようにだまして』という公演のチラシに「スタッフ募集」とあったので"作る現場を見たいな"と思って応募しました。仕事内容はまさに裏方です。小道具を作ったり舞台袖にいて小道具出したり。それがスゴく楽しかった。失礼な話なんですけど"いい大人がこんなにくだらないバカバカしいことを一生懸命やっている"しかも、とんがっている。TVよりも先をいっている感じがしました。この時はまだ松尾さんと交流はなかったのですが、脚本を書き、しかも役者としても面白いスゴい魅力のある人だと思って、東京で初めてこんなに面白い人に出会ったという衝撃をうけました。その後、大道具のバイトを始めるんですが、給料がよかったので、だんだん大学に行かなくなりまして..."このままだと、マズい"と悶々としながら、いろんな劇団のお芝居を見ていました。そんな日々の中で、やっぱり松尾さんのやってる"大人計画にしよう!"と。
ちょうど文芸部を募集していた大人計画に電話して、まあ松尾さんの自宅だったと思うんですが、松尾さんが電話に出て、初めて書いた脚本(2時間ぐらいある芝居の本)を持っていき、その数日後にはもう松尾さんに呼ばれ演出助手として稽古場にいました。
ちょうど松尾さんが忙しくて台本を書く時間がなく、稽古場で芝居を作っていたので、その記録係を担当することになったんです。ノートにメモして、家でそれを見ながら台本のカタチにする作業を、ずっとやっていました。うまくつながらない部分に勝手にセリフやギャグを足したりして、次の日の本読みでそれを読んで松尾さんや役者さんがゲラゲラ笑っている。それが嬉しくて演劇のイメージが変わりました。
そこからどんどん現場の面白さに目覚めて行きました。当時の大人計画は今では考えられない公演数で、月に一度は誰かの公演があるような状況。演出助手という立場上、全部に関わっていたのでとても大学には行けないし、お金ももらえないので深夜バイトをしてという忙しさで、ふと"嫌いだったのに、なんでこんなに一生懸命やっているんだろう?"と思うこともありました。
一方で、松尾さんは若手にいろんなコトを自主的にやらせる人なんで、新人だけで公演を作る機会もありました。役者を目指して入った人とは違って、自分は特に何かを決めて入ってきたわけではないので、とりあえず言われることを全部やっていたんです。そうして自分で本を書いてそれをやる。それが楽しくって"これがお金になったらいいんだけどな"みたいな感じでした。
当時の公演は、お客さんにとっては松尾スズキ率いる大人計画の「新人作家」がやっている公演っていう感じでしたね。松尾さんの影を見に来ているというか。その頃松尾さんや、すでに知り合っていた岩松さんが見にきてくれて、アドバイスをもらっていました。身近にそういう人がいてくださったので続けてこれたのかもしれません。
ターニングポイントは、1995年、25歳のとき。作・演出としては3作目の芝居となる『熊沢パンキース』。この作品は、それまで監修だった松尾さんが初めて役者として出てくれました。それまでは、演出している僕の後ろに松尾さんがいるような感覚が自分にも役者にもあったと思います。違うものをやろうとしても自然と松尾さんの世界に寄っちゃったり。それが、この作品で役者として松尾さんに出てもらうことで、全く別物になった気がしました。自分らしい作品ができたという手ごたえがありましたね。今の自分に直でつながっている感じがします。
この時、岩松(了)さんも見にきてくださっていて「なにを面白いと思って、これを作ったのかストレートに出過ぎている」というようなことを言われたんです。そういうアドバイスを頂いたことが嬉しくて、"次は違うことをやってやろう"と創作意欲が湧いて、翌年から自分で作・演出"ウーマンリブ"を毎年上演するようになりました。
その後、TVの仕事も増えTVドラマ「IWGP」(池袋ウエストゲートパーク)をきっかけにさらに世界は広がっていった。こうしてみると、いつも目標が曖昧なんですよね。だから、選り好みや優先順位がないんです。"何がやりたかったか、よくわからないから、とりあえずこれもやっとけ"みたいなスタンスが、今の自分を育てた。そして今もそのスタンスは変わっていないですね。岩松さんの作品がスゴい好きだから、岩松さんの芝居に出たいので、そのときは役者になりますみたいに。
今回、憧れの劇作家・演出家の岩松さんの作品なのですごく緊張している。役者として、自分の良さが未だにわからないので、役者としての自分を客観的に評価できない。だけど、初めての経験なのでワクワクしています。これかなぁっていう瞬間がたまに稽古場でもあります。本番は楽しみです。

- 『アイドル、かくの如し』
劇作家、演出家、俳優、映画監督と多彩な才能を発揮し続ける岩松(了)の書き下ろし最新作は、「夫婦善哉」をホウフツとさせる喜劇と見せかけて、ラストは衝撃!のサスペンス!?
岩松が作品の核となる「夫婦」に選んだのは、宮藤官九郎と夏川結衣。
岩松と同じく多彩な才能で活躍中の宮藤官九郎と本作が舞台初出演となる夏川結衣が初共演で一体どんな夫婦像を見せてくれるのか?岩松 了的アイドル論をお楽しみに!
東京公演 大阪公演 12月8日(木)〜29日(木) 1月8日(日) 本多劇場 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ 福岡公演 名古屋公演 1月11日(水) 1月14日(土) キャナルシティ劇場 名鉄ホール
取材・文・撮影/カネコダイゴ







