【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.125】高畑淳子『人に見つけてもらうのが一番の役との出会い』(掲載開始日:2011年11月16日)

高畑 淳子(たかはた・あつこ)
1954年10月11日生まれ。香川県出身。76年、青年座に入団し、『悲しき恋泥棒』でデビュー。その後、数々の舞台、映画、ドラマで活躍。02年には、『セイムタイム・ネクストイヤー』、『悔しい女』での演技が評価され、第9回読売演劇大賞選考委員特別賞を受賞。近年は、ざっくばらんなトークでバラエティ番組にも数多く出演している。

潜在的に女優に憧れていたのだと思います (高畑淳子)

高校3年の受験勉強が一区切りしたころ、"人から教わることじゃなく、自分から考えることをしたい""なにか創造的なことをしたい"という思いでいました。

美術でも音楽でもよかったんですけど、それにはデッサンとかピアノとか、入学する前から実技的な素養が必要でしょう。その点、演劇だけはそういう下地がなくても通用すると思ったので、演劇科のある大学に入った。

これが私が女優になるきっかけだとずっと思ってたんです。

ところが、先日判明したばかりなんですが、どうも小学校の時から従姉妹に向かって、「あんた、女優さんになりっ」と言っていたそうなんです。その従姉妹から、「あれは、自分がなりたかったんやなぁ」と言われて驚きました。

私自身忘れていたことでしたが、女性として一番素晴らしい仕事は『女優さん』だっていう思いが子供のころからあったんですね。

当時は親戚一同が「さぁ時間だよ!」と集まって一つのTV番組を観る時代。『007』『ナポレオン・ソロ』『逃亡者』なんかを観ていましたね。

そうやって、ドラマを見ていたり、映画好きの母が試験が終わると映画館に連れていってくれたりする中で、知らず知らずのうちに女優さんに憧れ、一番豊かな生き方は女優だっていう思いを持った。実はこれがはじまりだったんじゃないかと。やっぱり、親がタネを蒔いているんですね。

稽古場は遊び場 お芝居はお祭り 台本はおもちゃ (高畑淳子)

その後、青年座に入って女優として活動するのですが、ずっと売れなかった。女優では食べていけなかったので、パーティーコンパニオンのアルバイトをしたりしていました。そんな時、母に「30歳までに食えなかったら、田舎に帰りっ」って言われたんです。それもそうだな、これが最後という思いで29歳のときにやった『セイムタイム・ネクストイヤー』、これがターニングポイントになりました。

この作品は、その少し前に橋爪功さんと小川眞由美さんが『ドリスとジョージ』のタイトルで大ヒットした2人芝居です。青年座の稽古場でお二人の稽古を見て"なんていい芝居なんだろ"と思っていたんです。その作品に加藤健一さんに誘っていただいて、「あれができるんだ!」とスゴく嬉しくて、楽しく稽古していました。

ところが幕が開く直前のこと、加藤さんに「高畑さんの芝居は、どこもワルくないけど、面白くない」って言われたんです。その時の気分って言ったら、頭から"ジャーッ"って水をかけられたよう!!

もともと優等生だったので、怒られるのがキライ。だから、芝居の稽古場で「ダメだ」と言われることが屈辱だったんです。ダメでいいんだよね。でもそれがイヤだったの。そうしてどこかに、「怒られる=売れない」っていう回路ができあがっていった。

「人間ってのはもっと欠落するところがいっぱいある。それを恐れずやりなさい。稽古場は遊び場だよ。お芝居はお祭りだよ。台本はあなたのおもちゃだよ」って加藤さんに教わって、「そうだ、私自身そういうことがしたくて飛び込んだんだった!」って気づかされました。

学生時代からずっと培われてきた「怒られないようにきちんと芝居をしなきゃ」みたいな気持ちが仇となっていたんですね。今でもそれは自分の仇だと思っています。と同時に、そこで培われてきたものに支えられているのも確かだし、その両方の思いがありますね。

子育てを通して自分も成長 (高畑淳子)

そんな『セイムタイム・ネクストイヤー』は好評を得て、上演後は急にたくさんの芝居に呼んでいただけるようになりました。嬉しかったですね。それまでは、やりたいのに場がないことで悩む不毛な日々。それが一転してたくさんの仕事が入ってきて「うれしいなぁ」と思っていた矢先に妊娠。どんなことがあっても地元を離れないと言っていた母が、私が妊娠した途端に上京してくれて同居。それから3年後、母に「どんなキモチで出てきたか、わかってない」と大泣きされました。すっかり母に甘えて過ごしていたんですね。それをきっかけに所帯を分け、そこからは死にもの狂いで仕事と子育てをしてきました。

そういう時に仮面ライダーに出演。声をかけていただいた当初は正直戸惑いました。芝居をやってきて、仮面ライダーに求められるなんて!?という気持ち。けれど撮影が始まるとJACの人たちの体当たりの姿を見て、涙が出るほど感動したんです。

能書きたれている私はなんて薄いんだ、身をさらしてなんぼなんだ、そして誰かが私の中にある「何か」を見つけてくれて、声をかけていただいて役に出会う、これが一番なんだって思いました。

そんな風に成長してこれた理由に、やはり子育てを経験できたことがありますね。死にもの狂いの子育ての中で、自分も育てられた。子供のためなら何も恥ずかしくないという思いを持ち経験する日々の中で、傲慢な自分が謙虚になれたと思います。子供を持てたことに感謝です。

次の公演『欲望という名の電車』は10年ぐらい前から自分の中でやってみたいと思っていた作品。役は誰かから声をかけていただいて出会うものと思っている私が、唯一発信した役がこの主人公ブランチです。でも稽古初日に"エベレストだな"って思うくらい高い山。大変だ!とは思いますが、タイトルに負けない、『欲望という名の電車』をお届けしたい!そこで何かが動いている舞台を目指したいです!

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

先行投資系のお目当てを見つけることがオススメです。たとえば、ワンシーンに"パッ"と出てきた人などを見つけて、その人の行く先を追っていく。ワンシーンだった人が何年か後にトップスターになっていたりすると、「私のお眼鏡」って(笑)。そういう「このひと見つけ」みたいなのが楽しいと思います。

これから演劇をしようと思っている人へ

なによりも自分を豊かにしてくれる仕事ですし、何倍もの人生が歩けます。自分の好きな仕事を精一杯して、自分自身が成長していくほど豊かな仕事はないと思います。そして、もし諦めて引き返したとしても、素晴らしいお土産がついてくることでしょう。謙虚にいろいろなことを想像することは、ほかの人生を歩むにしても一番必要な要素だと思います。

高畑淳子さんの次回公演情報

青年座交流プロジェクト
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青年座交流プロジェクト
『欲望という名の電車』

劇団青年座が、テネシー・ウィリアムズの名作を上演。

"交流プロジェクト"と銘打っている通り、演出に文学座鵜山仁を迎えておおくりする。気になる主人公ブランチには、舞台、テレビと幅広く活躍する高畑淳子が務める。共演は、神野三鈴宅間孝行小林正寛ほか。さらに、日本が世界に誇るピアニスト、小曽根真が生演奏で参加。

新たなブランチをお楽しみに!

東京公演 埼玉公演
12月15日(木)〜25日(日) 12月9日(金)
世田谷パブリックシアター 富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
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取材・文・撮影/カネコダイゴ

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