【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.123】吉沢悠『カメラの前に立てるのは特別なコト』(掲載開始日:2011年9月21日)

吉沢 悠(よしざわ・ひさし)
1978年8月30日生まれ。東京都出身。1998年テレビドラマ『青の時代』でデビュー。以降、数多くのテレビ、映画等で活躍。最近ではドラマ『JIN--仁--』(TBS)、映画『孤高のメス』、『てぃだかんかん〜海とサンゴと小さな奇跡〜』に出演の他、ドラマ『南極大陸』(10月〜)が控えている。

ひょんなことが人生を変えた (吉沢悠)

もともと俳優になりたいという強い想いはなかったんです。どちらかというと表現することに対して、ニガテ意識がありました。

あるときカラオケ館主宰の夢カラオケオーディションというものがあったのですが、1等の商品がハワイ旅行だったんです。当時はまだ学生だったので、"ハワイに行きたい"という単純な理由から応募しました。だから歌手などに興味があったわけじゃなかったんです。ところがこのオーディションで準グランプリをいただきました。そして会場には各芸能事務所のスカウトマンの方がいらっしゃったんです。それで思いがけず芝居の稽古をさせていただけることになりました。TVのディレクターさんが講師で、物を使って伝えたりエチュードを入れたりする変わった稽古をやらせていただいたんです。その場で、人に何かを伝える時に言葉以上に大事な方法があるということを感じ、純粋にオモシロいなと思ったのが俳優になるきっかけです。

それから俳優として活動を始めましたが、ドラマ『動物のお医者さん』には苦労しましたね。連続ドラマの初主演だったので、作品の中心にいることでプレッシャーがありました。だけど、今まで見えていなかったスタッフさんの動きや、作品の中心としてずっと責任を持って演じていくことなど、学んだことは大きかったです。

ビジョンがないと置いていかれる (吉沢悠)

その後も仕事を続けていたのですが、ある時自分が俳優としてどうしていきたいのかが分からなくなって、1度芸能界を辞めました。それで半年間ニューヨークに語学留学したんです。留学してみると自分が想像していた以上に得るものは大きかった。ニューヨークはアメリカと言ってもアメリカじゃないようで、いろんな人種がいるし、宗教もたくさんある、ちょっと混沌とした場所なんです。

英語の勉強のため語学学校に通っていたのですが、クラスメイトに「なんで英語を勉強するの?」と聞かれることがあって、「これからの人生で役に立つかもしれないから」と返すと、「どんなところで役に立たせたいの?」「どういうプランで勉強するの?」...というふうにどんどん問い詰められる。なので、自分のビジョンが見えていないと置いてかれるんです。そのときは、ある程度答えられたんですけど、全然現実的ではなくて、良い意味で凹みました。それまで自分の中での世界が日本だけだったので、アメリカに行って"世界って広いんだな"と当たり前なことに気づかされました。自分の国のこともあまり知らなくて、スゴく恥ずかしい思いをしたんです。

それから改めて、自分のビジョンについて考えました。ほかの仕事につく選択肢もあるなかで、自分がカメラ前に立つことや、舞台上にいることが純粋に好きだというキモチに気づいたし、"そこに居られることは特別なんだ"と改めて気づいたんです。復帰して俳優としての最初の仕事は映像の仕事だったのですが、カメラの前に立ったときは、感動しました。そして"この景色を絶対に忘れてはいけない"と自分に言い聞かせました。

つかさんの演出で役者として成長 (吉沢悠)

舞台でのちゃんとしたお芝居は内村(光良)さんの『ハンブン東京』。当時は右も左も分からないので、ついて行くしかなかった。まして、演技について考えるヒマはなかったですね。演劇に関しては、つかこうへいさんの『幕末純情伝』での経験が大きかったです。演劇もいろんなジャンルがあると思うんですけど、つかさんの舞台は、緊張感のない日はないですし、作品に対して考えていない時間がない。たとえば人間って何枚も仮面を持っていて、やさしいだけじゃなく、怒ったりする瞬間があるじゃないですか。つかさんには「それを出せ」と言われました。"こういうことやっていいんだ"という発見もあったし、人間の裏と表の部分を出させてくれました。

それに「自分の言い方とか動きなど、まどろっこしいことはどうでもいいから、自分の魂の固まりみたいな物をお客さんにぶつけろ」っていう演出方法なので、当初は悩むというより狂いましたね。普通がわからなくなるんです。そのとき自覚はないんですが、友だちに会うと「やっぱり今稽古中だよね」って言われるぐらい変わっていたみたいで(笑)。つかさんの演出はスゴく大きな経験になりました。

今回、伊坂さんの作品に出演出来るということは俳優としてとても光栄です。多くのファンの方が本作に対していろんな想いを持ってらっしゃるので、とにかく面白くしようとキャストやスタッフと話をしながら稽古をしています。原作のファンの人が「あの場面どうやって再現するのだろう?」といった部分があると思うのですが、演劇ならではの演出になっています。それが舞台でやる醍醐味だと思うので、うまく表現できるようにしていきたいです。

吉沢悠さんへQ&A

Q:最近の悩み事は?
A:釣りに行けないコトです。釣りをすると気楽になれて、自分の中で複雑だった問題がシンプルになるんですよ。
Q:落ち込んだときに食べるパワーフードは?
A:キムチです。最近、ひと月ほど韓国にいたのですが、現地でキムチを食べてから風邪をひかなくなりました。
Q:もし、俳優になっていなかったら?
A:今までの人生で自らやりたいと思えた職業が役者。なので、考えられないですね。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

映画を選ぶように自分がどんなジャンルが好きか調べるコトです。そうすれば、きっかけとして入りやすいと思います。僕自身、舞台は難しいものだと思っていましたが、あるとき、大人計画の舞台を観に行ったんです。そうしたら、上演中ずっとお客さんが笑っていた。日本ではありえない状況でしたし、ものすごく衝撃的で舞台の力を感じました。

これから演劇をしようと思っている人へ

まず、劇団に参加する。そして、難しく考えないで純粋に楽しんでください。楽しんでいるうちに、目標としている物のためにいろんなステップが出てくると思うので、一歩ずつ踏み出していく。気づいたらその場所にいたというコトがあると思うんですよ。

吉沢悠さんの次回公演情報

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舞台『オーデュボンの祈り』

石井光三オフィスが、伊坂幸太郎デビュー作「オーデュボンの祈り」を「7days judgiment --死神の精度」(2009)に続く第2弾として舞台化。小説の中の数々ある印象的なフレーズ、キーワードの中で【祈り】【FUTURE=未来】は特に、"今の私たち"に響く言葉だ。伊坂作品ならではのシュールなミステリー、そして、かすかな希望の存在。舞台「オーデュボンの祈り」を今だからこその思いで上演する。

東京公演 北海道公演
9月30日(金)~10月12日(水) 10月19日(水)
世田谷パブリックシアター 札幌教育文化会館
大阪公演 宮城公演
10月22日(土)・23日(日) 10月25日(火)
サンケイホールブリーゼ 電力ホール
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取材・文・撮影/カネコダイゴ

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