もともと普通の学生でした。子供のころからずっと動物が好きだったので、獣医になるのが夢だったんです。その一方で母親が僕を芸能界に入れたかったみたいで、高校1年生のとき、勝手にオーディションに応募していたんです。「えっ!」とビックリしたけれど、受からないと思っていました。それが一次審査に受かったんです。実家が福岡なので、二次審査は遠いから行かなかったんですが、なぜか合格。"ここまで来たらやるしかない"と思ったし、父親が「一花咲かせてこいよ」と言ってくれたので、"がんばろう"と決心しました。
最終オーディションはとても緊張したのを覚えています。人前で自己PRしたことがなかったので、自分の見せ方がわからなくて。特技披露では福山雅治さんの『ひまわり』を歌ったのですが、無我夢中でやったことで逆に自分自身を出せたのかもしれないですね。準グランプリをいただいたときは、オーディションという競争に勝ってうれしいキモチでいっぱいでした。
その後、俳優として仕事を始めたのですが、当初はわからないことばかりで、たくさん怒られました。家に帰って家族や友だちに気持ちを打ち明けようと電話をしても、つい強がってしまい、電話を切ってから泣くことも。けれどそれが2、3ヶ月続いたある日、「芝居でこの人たちを見返してやろう」という気持ちがフツフツと湧いてきたんです。それから芝居が好きになり、仕事への取り組み方が変わってきたように思いますね。
『仮面ライダーキバ』や『恋空』で主演をいただいたのは、この仕事を始めて1、2年目のこと。ターニングポイントと言うにはまだ早すぎて実感はありません。振り返るとあの時は死ぬかと思うほどの忙しさで無我夢中でした。
『恋空』の現場に行って、『仮面ライダー』の現場に行って...の繰り返し、台本を覚えるのは移動の車の中で、睡眠は空き時間に3分だけ...という毎日が続いたんです。
だから自分が何をやっているのかわからなくなってしまう日もありました。今考えると、もっとじっくり考える時間や自分を見つめ直す時間を持ちたかったと思います。ハードすぎてちゃんと役について考えられていない自分がいた気がして。その一方で、反響は大きくて、地元に帰ったときに親や友だちが喜んでくれたし、見ていただいた方が街で声をかけてくださるようになりました。そんな風に周りが変わってきたのはありましたけど、自分が変わったかはわからなかった。
実感があるターニングポイントは、自分がより芝居に対して考えるようになった『輪廻の雨』というドラマに出演した時だと思います。知的障害者の役をやらせていただいたんですが、演じるにあたって、見た人に「ふざけてるんじゃないか」と思われたりしないか怖かった。なのでどうしたらいいのか、監督や共演者と話したり、障害者の方のビデオを見て今まで以上に研究して臨みました。その結果、スタッフの方から「撮影中泣いちゃったよ」という言葉をいただいたときはうれしかったです。話自体はスゴく重いんですけど、僕にとっては心に残っている作品です。
初舞台はミュージカル『テニスの王子様(テニミュ)』。最初は緊張や不安がありましたが、生でお客さんの反応を感じるそのライブ感がとても心地よかったです。『テニミュ』って原作もスゴく人気あるので、出ただけで「キャー」って歓声が起きる。(自分が)一瞬人気者なんじゃないかと錯覚しそうになるんです。けれど、その時"ここで満足したくないな"と思いました。満足してしまったら終わってしまうじゃないですか。そういう部分でもこの初舞台が自分のためになりましたね。
今回でD-BOYS STAGEは9作目。僕は1作目から出演させていただいているのですが、その頃からの演出家・茅野イサムさんには舞台での動き方や発声の仕方を教えてもらいました。イサムさんは体育会系でストイックな方なので、若手の何も知らない役者に対しても本気でぶつかってきてくれるんです。つらかったですけど、ためになるコトを言ってくれるので、役者として成長させていただきました。
本公演では演出も初めてご一緒する鈴木裕美さんですし、客演の方もいらっしゃるので、いい芝居を盗んでいきたい。それに役を通して物語を伝えていくことはもちろん、瀬戸康史としての人間性みたいなモノも伝えることができたらと思います。
取材・文・撮影/カネコダイゴ











