19歳のときに家出をしたのは、芸人とか女優になるため、ではなかったんです。歌の中で尾崎(豊)に、「自由って一体何だい?」「熱くなりたくはないかい?」と問いかけられて、遅い反抗期がやってきたようなもの。名門校といわれる雙葉学園で小中高と過ごし、お嬢様道を走ってきたことの反動なのかもしれません。
ですから、いざ家出をしたものの、社会のことはまったくわからない状態でした。男性とお付き合いしても、相手が働かない方だったので、バイトでふたり分の生活費を稼ぐのに必死の毎日でした。
そんな生活にようやく慣れてきたのが、2年後くらいでしょうか。彼の借金を返すテンポをつかんできて、少ないながらもお金も貯めることができるようになったんです。そのお金で舞台芸術学院の夜学に入学。ミュージカル科で歌や演技などの実戦的なレッスンを受けた1年半は、とても楽しい毎日でした。
活動の場が演劇からお笑いに移っていったのは、『ボキャブラ天国』シリーズ(フジテレビ系で90年代に放送されたバラエティ番組。若手芸人の登竜門と言われた)でお笑い芸人ブームがあり、とにかくそっちで名前を売ったほうが、いろんなお芝居に出る近道になるんじゃないかと思っちゃったんです。
それが近道ではないと気づくのは、もうずいぶん遠回りしてからのことでした。
でも、びっくりするくらい売れない芸人生活は、それなりに楽しいものでもあったんです。その証拠に、売れない日々が12年くらい続いても、「辞めよう」と思ったことは一度もないんです。
『進ぬ!電波少年』(日本テレビ系)という番組で半年間、無人島で暮らしたときは毎日お腹がすいて辛かったですし、帰国後、笑いの感覚がズレてしまってライブでスベりまくったときも、なんとかウケるまで頑張ろうと思いました。
コンビ解消をしたときは、さすがに心が痛くて寂しかったですけど、気がついたらピン芸人のネタ作りをセッセとやっていました。
お笑いの素晴らしいところは、自分のダメな部分を武器にできるところだと思います。実は浅倉南のネタを始めたとき、最初はネタ見せで落とされることが多かったんですよ。それでも半年やり続けて38歳になったとき、やっとテレビに出していただくようになって。年齢を重ねて、言葉に重さが出てきたのかもしれないですね。
だから、近道するつもりでとんでもない遠回りをしたことも、私にとっては意味のある遠回りだったと思います。
ところで、私が南ちゃんのネタを始める少し前のことなんですけど、山田ジャパンという劇団との縁で「演劇」と再会するんです。同期芸人で、今は俳優として活動している大野泰広とゴハンをしたとき、「やっぱり芝居は私の原点なんだよね~」とポロッともらすと、「知り合いの劇団が旗揚げするんだけど、女優を探している」という情報を教えてくれたんです。しかも、代表者の山田能龍も元芸人で、一緒のライブに出演したりしていて、知ってる人だったんです。
それからはトントン拍子でした。
懐かしく、そして楽しい舞台でした。芸人として舞台に立つのとまた少し違う。稽古はもちろん、幕があいてからも「あそこはなぜウケなかったんだろう」「もっとこうしたらウケるんじゃないか」って、芝居を作っていく感じ。いつもはピン芸人でひとりだけど、大人数でひとつの舞台を作っていく。たまらないです。
初演から回を重ねるごとに、だんだんとお客さんが増えていくのをかいま見るのも醍醐味ですね。同級生に40枚くらいチケットを売ってヒイヒイ言ってたのが、彼女たちのクチコミでたくさん買ってもらえるようになって。劇団を気に入ってもらえることがすごくうれしいんです。
とはいえ、芸人としての仕事と並行しての活動ですから、なるべく迷惑をかけないようにと毎回、ヒヤヒヤものです。なんて言ってるそばから昨年の秋の公演では、リハーサル中に滑車から落ちて腰の骨を三本ほど折ってしまい、まわりにサポートしてもらいながらの出演になってしまいました。なので今回の第8回公演はカルシウムをたくさんとって、頑張りますので、みなさんぜひぜひ観にきてください。
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山田ジャパン⑧
『いいえ、ヴィンテージです』 作・演出 = 山田能龍
【CAST】
◆Aキャスト
いしだ壱成
いとうあさこ(マセキ芸能社)
太田恭輔(ブラボーカンパニー)
岡田亜矢(THE フォービーズ)
佐伯紅緒
道井良樹(電動夏子安置システム)
◆Zキャスト
大野泰広(マセキ芸能社)
ちかまろ(松竹芸能)
玉手みずき
宮本理英(オスカープロモーション)
みょーちゃん(松竹芸能)
矢田一路
◆全日程出演
カワモト文明
ただのあさのぶ
羽鳥由記
松本渉
横内亜弓
若村勇介(以上、山田ジャパン)
尾形雅宏(グワィニャオン)
【日程】
<サンモールスタジオ>
○4/1(金)19:30~Aキャスト
○4/2(土)15:00~、19:00~Zキャスト
○4/3(日)15:00~、19:00~Aキャスト
○4/4(月)15:00~、19:30~Zキャスト
○4/5(火)19:00~Aキャスト
<駅前劇場>
●4/8(金)19:30~Zキャスト
●4/9(土)15:00~、19:00~Aキャスト
●4/10(日)15:00~、19:00~Zキャスト
●4/11(月)15:00~、19:00~Aキャスト
悲しい程に、居残る女。ほとんどの事を、やめた男。ふたりは出逢う。
男「知ってるかい?物を遠くに放るには、45度の角度で投げるのが良いんだって」
女「知らなかった。でもどうして?」
男「...ハイパーオリンピックがそうだから」
女「...素敵」
男「愛のマイレージは貯まってる?」
女「世界一周出来るわ」
男「愛のLOTO6は?」
女「キャリーオーバー中よ」
男「愛の居残りさんだね?」
女「いいえ...ヴィンテージです」
山田ジャパンの独特のコメディー感と、独特の哲学感で構築されたその世界観に浸れ。キャストも豪華にその新境地を押し開く。見逃すなかれ!
サンモールスタジオ 駅前劇場 2011年4月1日(金)~4月5日(火) 2011年4月8日(金)~4月11日(月)
取材・文/ボブ内藤 撮影/松谷祐増(TFK)











