【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.117】浦井健治『多くの人に支えられて今の僕がある。それを忘れてはいけないと思います』(掲載開始日:2011年1月13日)

浦井 健治(うらい・けんじ)
1981年8月6日生まれ。東京都出身。2000年、『仮面ライダークウガ』(テレビ朝日系)で俳優デビュー。04年には東宝ミュージカル『エリザベート』のルドルフ皇太子役に抜擢。06年にはミュージカル『アルジャーノンに花束を』で舞台初主演を務め、第31回菊田一夫演劇賞を受賞。09年出演の『ヘンリー六世』三部作では第44回紀伊國屋演劇賞個人賞、第17回読売演劇大賞杉村春子賞を受賞する。

デビューして間もないころから幸福な出会いに恵まれました (浦井健治)

高校時代、ダンススクールに通っていたんですけど、そのスタジオの先生に、「本当は何がやりたいの?」と聞かれたのが最初のきっかけでした。ダンスはとても面白かったけど、演技をするってどんなことなんだろう?と、別の興味が生まれたんですね。

最初にいただいた役者としてのお仕事が『仮面ライダークウガ』。右も左もわからない僕にとって、いきなりのチャレンジでした。なにしろ、オダギリジョーさん扮するクウガと敵対する悪の首領、ですからね。でも、ふり返ってみるととても貴重な体験でした。

僕にとっての大きな収穫は、ひとつの作品には多くの人が関わっていて、その共同作業の中から作品が生まれるというのを学べたこと。雪山での戦闘シーンを撮影したときは、髪からツララが伸びるほどの吹雪の中で行われたんですが、スタッフの方が温かい缶コーヒーを首に当ててくれたりして、俳優の演技というのはこういう支えがあってのことなんだなぁと思いました。早朝から撮影が始まって、26時(翌日の午前2時のこと)に終了なんてことも当たり前で。それでも作品をよくしようと、みんなが一丸となって現場を盛り上げていた。とてもいい経験をさせていただきました。

翌年にはミュージカル『美少女戦士セーラームーン』で、初舞台を踏みました。カメラの前で演じるのと違って、目の前のお客様の息づかいを感じながらの演技は、新鮮な体験でした。特にこの作品は、作品自体にたくさんのファンの方がいらっしゃって、劇場にはつねに熱気がただよっていました。また、お客様に小さなお子さんが多いのもこの作品の特徴で、そうしたお客様をも楽しませるのはすごく難しいことだと思うんです。だから、「まもちゃーん!」と、僕が扮したキャラクターの愛称で声援をもらったときは、役として見てくれているんだなと、本当にうれしかったですね。

『エリザベート』のルドルフ皇太子役は僕にとって大きな挑戦でした (浦井健治)

こうして与えられた役に全力で取り組んでいくうち、一つひとつ新たな課題が自分の中で生まれていきました。デビューからの10年間は、そういった意味でも本当に幸運な出会いに恵まれていたと思います。

中でも印象深いのは、東宝ミュージカル『エリザベート』のルドルフ皇太子の役をいただいたこと。まず、歌稽古で他の出演者の方々の歌を聴いたときは衝撃そのものでした。全身を楽器のようにあやつるその歌声にショックを受けましたし、それまで声楽の訓練もしたことのない僕の歌声は、簡単にかき消されてしまうんです。

また、『闇が広がる』という楽曲を歌うことも大きなプレッシャーで、僕は高音パートを担当するんですが、譜面通りに歌うこと自体、当時は針に糸を通すような緊張感を強いられました。このときは、競演した先輩方のアドバイスにとても救われました。「うまく歌おうとするな」とか、「ルドルフの気持ちになって歌え」とか、今でも参考にしている助言をたくさんいただきました。

『エリザベート』は、どの劇場も1000人を超える大舞台で上演される作品です。だから、終演後のお客様の拍手もものすごい迫力で、まるで海の波にもまれたような感じなんです。2004年から参加し、300回以上ルドルフという役を演じさせていただきましたが、ひとつの役とこれだけ長い時間向き合えたことは、とても幸せなことだと思います。次々と新しい課題が見えてきて、演じるたびに新たな発見があり、やり甲斐を感じました。ルドルフは、僕を成長させてくれた、大切な役のひとつ。とても思い入れが強いです。

難しい役だからこそ挑戦する甲斐がある (浦井健治)

2006年にミュージカル『アルジャーノンに花束を』で、主人公のチャーリィ・ゴードン役を演じたのも、印象深い出来事でした。舞台に出ずっぱりということで体力的にもキツかったですし、知的障害から天才に変化していくチャーリィを演じ分けるのも難しい作業でした。

このときも、共演者やスタッフの方々の助けがなければ超えられないハードルでした。支えていただいている方々への感謝の気持ちは、つねに忘れてはいけないことだと思います。もちろん、その支えに頼りきるのではなく、期待に応えるために努力し続けることも同じように大事なことだと思っています。

今回のミュージカル『エディット・ピアフ』で僕は、フランスを代表する歌手、イブ・モンタンとピアフの最後の夫、テオ・サラポという2役を演じるんですけど、まずはシャンソンという音楽を表現するのはこれが初めて。シャンソンの持つ、独特かつ歌そのものにお芝居の要素が感じられたりするところに歌う難しさを感じます。

ただ、難しいからこそ、今の自分の力量と向き合うきっかけにもなるはず。今まで以上に、役の気持ちを伝えられるような歌い方を目指していきたいと思っています。

また一つ、また一つと自分の目の前に壁が現れる。そのいただいたハードルをしっかり越えられるよう、これからも一つひとつ大切に演じていきたいです。

浦井健治さんへQ&A

Q:落ち込んだときに食べるパワーフードは?
A:ユッケ。生肉はノドにもいいといいますし、
ちょっと元気がないなというときは、肉を
食べるに限ります。
Q:最近、ハマってることは?
A:喫茶店めぐり。コーヒーが好きなので、お
いしいコーヒーに出会うと、お店の方と会
話したりするのが楽しいです。
Q:もし、俳優になっていなかったら?
A:動物が好きなので、小さいころは獣医にな
りたいと思ったこともあります。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

演劇は、終わってしまえば消えてしまうもの。それとまったく同じものを再現することはできません。だからこそ、それを観たときの感動は強く心に残るものだと思うんです。劇場に足を運ぶところから始まって、見終わって家に帰り、『面白かったよ』という感動を家族や友人に語るところまで、すべてが演劇なんだと思います。その魅力を是非、味わい尽くしてください。

これから演劇をしようと思っている人へ

とにかく、戯曲を読んだり、演劇を観たり、できる限りたくさんの作品に触れるということは僕自身、つねに心がけています。それから、どんなに小さなことでも、日々の生活の中で自分が感じたちょっとした幸せ、悲しみといったものに敏感になること。演技をするための筋肉トレーニングのようなものですね。経験の積み重ねが多くなればなるほど、演技の幅が広がるのではないかと思います。

浦井健治さんの次回公演情報

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ミュージカル『エディット・ピアフ』

劇的な人生を歩んだスターとして知られているシャンソン歌手、エディット・ピアフ。母親に捨てられた暗い過去を持つ少女は、歌の力で世界を切り開き、大スター「ピアフ」となった。だが、実際のピアフは、常に借金まみれで、恋愛は奔放。そんな粋で豪快なピアフには、派手な噂が絶えず、様々な伝説が誕生していった。ピアフの没後、約半世紀経つ今、安蘭けい浦井健治らミュージカル界のトップスターをはじめ、鈴木一真中嶋しゅう甲本雅裕ら実力派俳優陣によりその伝説が明らかにされる!

東京公演 大阪公演
2011年1月20日(木)~2月13日(日) 2011年2月18日(金)~20日(日)
天王洲 銀河劇場 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
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取材・文/ボブ内藤
撮影/松谷祐増(TFK)
スタイリスト/宮崎智子
衣裳協力/M DKNY (ダナ キャラン ジャパン)
ヘアメイク/山下由花

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