- 武田 真治(たけだ・しんじ)
- 1972年12月18日生まれ。北海道札幌市出身。高校在学時に第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞。翌年、テレビドラマで俳優デビューする。92年には映画『七人のおたく』に出演。95年、『身毒丸』で初舞台を踏み、サックス奏者としてCDデビューを果たした。その後も映画や舞台、バラエティー、ラジオ、CM、音楽など、幅広い分野で活躍している。
ジュノン・スーパーボーイ・コンテストの応募用紙を郵便ポストに投函したのは僕なんですけど、それは必ずしも自分の意志ではありませんでした。東京に行ってサックスプレーヤーになりたいと宣言した僕に、「芸能界の厳しさを思い知りなさい」と母がけしかけたんです。その結果がグランプリ受賞、そして俳優デビュー、でした。
本来は僕が高校を卒業するとともに、バンドのメンバーと一緒に上京して、音楽活動をするつもりだったんです。その計画が、思わぬ形で狂ってしまったわけです。
そもそも僕が音楽にのめり込んだのは、進学校を卒業して、いい大学に進学し、いい会社に就職して...という未来が信じられなかったからでした。もちろん、高校を途中でドロップアウトするのではなく、大学に進学して音楽活動をする道もあったかもしれませんが、そのころの僕には1年の我慢が永遠の苦痛に思えたんです。
とにかく、それからは芸能界での目まぐるしい日々が始まりました。ただ、忙しい生活の中で、東京の定時制の高校に通えたことは、自分としては大きかったですね。校長先生より年上の70代の人がクラスメートだったり、ユニークなプロフィールをもった人がたくさんいて、普通の高校にはない雰囲気がありました。ある意味で、初めて「社会」というものを学んだ場所だったように思います。人生にはさまざまな選択肢があって、何をどう選ぶかで自分というものは確実に決まるんだなということを知った気がします。
ただ、芸能界に入ってからの20代の僕は何かを選ぶという余裕もなく、激しい流れにただ身をまかせるしかありませんでした。
1995年には、サックスでCDデビューし、ホールツアーを行いました。高校時代の夢がかなったわけです。僕にとってそれは、身に余る光栄でした。ところが、小さなライブハウスなどで下積みした経験もない僕には、荷の重いチャンスでもあったんです。ツアーの途中で顎関節症になり、サックスを口にくわえることができなくなったとき、そのことを思い知りました。
同じ年に『身毒丸』(演出・蜷川幸雄)で初舞台を踏んだときも、同じような挫折感を味わいました。演じるのに難しい役だっただけでなく、力を入れるときと抜くべきタイミングがわからず、稽古から本番までの間、ずっと気を張り詰めていなければなりませんでした。身毒丸から武田真治に戻れなくなってしまったんです。これは、トラウマになるほどの苦痛でした。
ただ、こうした経験は、今になって思えば決して無駄ではありませんでした。チャンスを生かすには、つねにスキルを磨いてそれに応えられるだけの実力を身につけておかなければならないということを学んだし、舞台でベストな演技をするためには、役を離れてリラックスする時間が大切だということも知りました。
20代後半になって、忌野清志郎さんに誘っていただいて、ツアーにサックス奏者として参加させてもらったことは、そういう意味でとても貴重な経験でした。そして、「もう二度と立ちたくない」と思っていた舞台にも2004年、『夜叉ヶ池』という作品で復帰することができました。初舞台から9年がたってしまいましたけど、僕にはそれだけの時間が必要だったのかもしれません。
ドラマや映画ではカメラに向かって演技をするわけですが、舞台では目の前の大勢の人に対して役に扮した自分を宣言する場です。現実と虚構の境目がわからなくなるのは役者にとっては当然なんです。ところが『夜叉ヶ池』は、受け入れ難い現実を前に自らの首を鎌で切り落とすシーンで終わります。もし、9年前にこの役を引き受けていたら、僕はこの公演の千秋楽で本当に自分の首を切り落とすつもりで臨んだことでしょう。でもこのとき、切る仕草の中に「本心」を感じさせるのがプロの俳優なんだということがわかっていたことは幸いでした。
そしてこの舞台は、新たな出会いを生み出してくれました。舞台を観た演出家の小池修一郎さんが、ミュージカル『エリザベート』のトート役に僕を誘ってくださったんです。トートというのは、「死」を意味する死に神のことで、初対面で小池さんが語ってくれた「君は、死神っぽいから」という言葉が印象的でした。この言葉のおかげで、日生劇場という大舞台に出演するという大きな挑戦を決意することができました。
ストレートプレイでは、セリフが聞き取れないようなしゃべり方でも役の感情が伝わることがありますが、ミュージカルは歌や音楽、踊りといった様式の中でそれを表現しなければなりません。『エリザベート』は、とても多くの学びを与えてくれました。
今回のパンクオペラ『時計じかけのオレンジ』でも、僕はきっと多くのことを学ぶでしょう。暴力的なシーンが多い作品ですが、本当に殴り合ったりすることなしに、その迫力をいかに伝えるか。とにかく、みなさんに「観てよかった」と思ってもらえるものにしたいと思います。
- パンクオペラ『時計じかけのオレンジ』
スタンリー・キューブリック監督の傑作映画でも知られる小説『時計じかけのオレンジ』」が、ついに舞台化される!演出に河原雅彦、主人公アレックスに小栗旬。さらに橋本さとし、武田真治、高良健吾、山内圭哉、石川禅、キムラ緑子、吉田鋼太郎ほか豪華キャストが集結
!! ようこそ...衝撃と狂騒のパンク・オペラ『時計じかけのオレンジ』の世界へ。
東京公演 仙台公演 2011年1月2日(日)~1月30日 2011年2月4日(金)~6日(日) 赤坂ACTシアター イズミティ21・大ホール 大阪公演 北九州公演 2011年2月9日(水)~15日(火) 2011年2月18日(金)~20日(日) 梅田芸術劇場 メインホール 北九州芸術劇場 大ホール 愛知公演 2011年2月24日(木)~27日(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール
取材・文/ボブ内藤 撮影/樋木雅美











