【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.112】杏『心から「好き」と言えることが今の私を作っているような気がします』(掲載開始日:2010年10月28日)

(アン)
1986年4月14日、東京都生まれ。15歳のとき、女性ファッション誌のモデルとしてデビュー。その後、パリ、ニューヨーク、ミラノなどで活躍し、2007年からは女優としても活動をはじめる。最近ではフジテレビ系ドラマ『JOKER 許されざる捜査官』に出演した。2010年11月~12月にかけてはミュージカル「ファントム」で初舞台を踏む。また11月10日には『LIGHTS』でCDデビューも果たす。

モデルを始めたときはお化粧の仕方も知らず... (杏)

小学生のころは、リトルリーグに入って男の子と一緒に野球に夢中になる一方、ミッション系の学校だったので聖歌隊で歌う毎日を送っていました。イースターやクリスマス、秋の収穫感謝祭といった行事はもちろん、毎日の礼拝でも賛美歌をうたっていました。

日記を書くのも毎日の決まりで、なんでこんなに大変なことをしなければならないんだろうと当時は思っていたんですが、このときの経験があったからこそ、文章を書くことに親しみを感じることができたんだと思います。このころ好きだったこと、親しんでいたことがすべて今につながっているんです。

とはいえ15歳のとき、周囲の誘いを受けてモデルを始めたときは、半信半疑。なにしろ、お化粧もしたことがなかったので、メイクさんが目に筆を近づけてくるのにいちいち驚いたり、カメラマンさんがシャッターを押すたびに光るストロボのまぶしさにも慣れるまで時間がかかりました。

最初は借りてきた猫のようにカメラの前に立つだけでしたが、そのうち「どんな写真になって、どんな風に雑誌に掲載されるんだろう」と考えるようになって、多くの人が力を合わせてひとつのものを作り上げる現場の面白さを感じるようになっていきました。

大きなターニングポイントは、19歳のときでした。海外のプレタポルテコレクションに参加したことで、私は大きく成長できたと思います。

無我夢中で世界を回ったことで、大きく成長できた (杏)

今思えば、なんて向こう見ずだったろうと思います。ニューヨークを皮切りに、ロンドン、ミラノ、パリ、シンガポール、東京と、北半球を時計と逆回りに一周するような旅だったんですが、言葉も通じない土地をたったひとりでまわったんです。宿を手配するのも自分だし、1日15会場もまわらなければならない日などは、どんなルートで行けばいいか、綿密なプランを立てて、メトロを駆けずり回りました。

怖いもの知らずで無我夢中だったからこそ、できたのかもしれません。むしろ、モデルの仕事を通じて、いろんなところに行って、いろんな人に会うことに大きな醍醐味を感じていました。自分を表現するということに真剣に向き合うことができたのは、このときの経験が大きいと思います。

2007年に女優デビューのお誘いを受けたときは、おこがましいという気持ちが先に立って最初は尻込みしてしまいましたけど、せっかくいただいた機会に応えたいと思えるようになったのは、私にとって幸いなことでした。

その後、連続ドラマにも出演するようになってからも、たくさんの貴重な経験を積むことができました。連続ドラマは4カ月くらいの間、同じスタッフ、共演者と作品づくりをする作業ですから独特の連帯感がありましたし、すぐに反応が返ってくるだけにやり甲斐もありました。

歌手デビュー、そして初舞台。今年はチャレンジの年です (杏)

書評をしたり、文章を書いたりすることもそうなんですが、多くの活動は周囲の人からお誘いをいただいて始めたこと。だけど、どれも私が心から好きだったことにつながっているのは、とても幸せだなぁと思います。

でも、好きなことばかりだからといって、すべてが楽しいことばかりかというとそうではありません。実際、文章についても、書いているときよりも、どんなことを書こうかと悩んでいる時間のほうが長いんです。なかなか文章が思い浮かばないときは辛いんですけど、壁を乗り越えたときは本当にうれしいんです。

2010年は私にとって、新しいことにチャレンジする年でもあります。ラブソング・カバーアルバム『LIGHTS』で歌手デビューをしたのはそのひとつ。これまで私はものを表現する上で、なるべくポジティブな姿勢で夢や希望を語ろうとしてきたところがあるんですが、歌というのはネガティブな面もさらけ出さないと伝わる表現にならないので、新しい自分を発見したような気がしました。

もうひとつのチャレンジは、ミュージカル『ファントム』。これが初めて踏む舞台であると同時に、初めてのミュージカルでもあります。超えなくてはいけないハードルはたくさんあるのですが、ネガティブな気分になったことは不思議と一度もないんです。歌い方、演じ方を何度も試せるというところに、カメラの前で演じるときとは別の楽しさを感じるんですね。初日が来るのが今から楽しみです。

杏さんへQ&A

Q:最近、面白かった本は?
A:村木嵐さんの『マルガリータ』。戦国末、ロ
ーマに派遣された天正遣欧少年使節のお話で、
大変興味深く読みました。
Q:最近、ハマってることは?
A:本棚の並べ替え。床に積み上げられた山を崩して、作者別にジャンル別に、本の大きさごと
分類するのが楽しいです。
Q:恩師は誰ですか?
A:小学校の担任の先生が思い浮かびます。『失敗は成功の母』が口癖で、何かに挑戦することの
大切さを教えてくれました。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

ハンカチをお忘れなく。『ファントム』をご覧になられる方は特に(笑)。私自身、稽古中に涙を流してしまうシーンがたくさんあるんです。それは、単に涙を誘うために作られたシーンではなかったりするんですが、人間のドラマに心を動かされずにいられないんです。女性の方は、ウォータープルーフのメイクだとなおよし、だと思います。

これから演劇をしようと思っている人へ

自分を表現する上で役に立つことは、あらゆる分野に渡って存在しているんだと思います。映画やお芝居をたくさん観ることはもちろんですし、旅行をしたり、本を読んだり、友達とお酒を飲んで楽しいおしゃべりをしたりすることの中にもヒントが隠されているかもしれません。私が気をつけているのは、どれも楽しむということ。そうすれば、きっと重要な答えが見つかるはずです。

杏さんの次回公演情報

ミュージカル『ファントム』の画像画像を拡大する
ミュージカル『ファントム』

2008年1月、鮮烈なミュージカルデビューを果たした大沢たかお。その伝説の作品『ファントム』が、再び彼を主演に迎えて帰ってくる!

闇の世界で生きるエリック(ファントム)に、光や生きる希望を与えるヒロイン・クリスティーン役には、映画『BANDAGE』などで上質な存在感を輝かせるが初のミュージカルに挑戦。劇場支配人、ゲラール・キャリエール役に凛とした佇まいが光る篠井英介、歌姫カルロッタ役にはシリアスからコミカルまで幅広い演技で見るものを魅了する樹里咲穂。すばらしいキャストを迎えて、美術、衣裳、音楽すべてにおいて前回よりスケールアップした、再演ではありながらまったく新しい、大沢たかおラストミュージカル。これは見逃せない!

東京 大阪
2010年11月2日(火)~22日(月) 2010年11月28日(日)~12月9日(木)
赤坂ACTシアター 梅田芸術劇場メインホール
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取材・文/ボブ内藤 撮影/松谷祐増(TFK) ヘアメイク・スタイリスト/山邊裕之(アユターレ)

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