【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.111】小西遼生『目の前に壁があると逆にやる気が出るんです』(掲載開始日:2010年10月14日)

小西 遼生(こにし・りょうせい)
1982年2月20日生まれ。東京都出身。2003年12月、ミュージカル『テニスの王子様』で初舞台を踏む。2005年にはドラマ『牙狼<GARO>』で主人公の冴島鋼牙を好演。2007年には日本初演20周年を迎える『レ・ミゼラブル』に出演し、ミュージカル俳優として高く評価された。この10月10日には「2011 Official Calender his」が全国の福家書店、通信販売、スターダストショッパーズなどで発売される。

表現する喜びを感じて「生きている」と実感 (小西遼生)

この世界に入るまで、舞台は数えるほどしか観ていませんでしたし、テレビや映画も他の人以上にハマった経験もないんです。ふり返ってみると、なんとなく生きていたなぁという感じでしょうか。

そんな僕が、初めて感動したのが20歳くらいのとき。ストリートミュージシャンの人たちと知り合って影響を受け、路上ライブを始めたんです。最初は恥ずかしかったけど、自分の感性を揺り動かされるような手応えがあって、人生のギアがカチッと切り変わったような気がしました。何かを表現することで、自分が考えていること、感じていることがはっきり見えてきた。「生きている」という実感を、初めて感じることができたんです。

その感動は、俳優としてミュージカル『テニスの王子様』という大きな舞台に立たせてもらったときも、少しもおとろえませんでした。舞台の場合、演技に対するお客さんの反応が直にかえってくるのが醍醐味であり、怖さでもあります。今では「テニミュ」という愛称で親しまれているミュージカル『テニスの王子様』も、僕が出演させてもらったときはこんなに盛り上がるとは思ってもいなかったんです。その盛り上がりを作ったのは、何度も舞台に足を運んでくれたお客さんたちです。その熱気を生で感じられたのは、とても貴重な体験で、イッキに舞台の魅力に惹きつけられました。

出演者も同年代の人がほとんどでしたから、同じ学校の仲間みたいな連帯感がありました。稽古のときは「間違っていてもいいから、とにかく自分たちがいいと思うことをやってみよう」なんて、熱い思いをみんなで共有していましたね。

『レ・ミゼラブル』と出会い大きく成長することができた (小西遼生)

初めて『レ・ミゼラブル』を観たのは、2004年のこと。衝撃を受けましたね。言葉のひとつひとつが深くて、どの歌も心に響きました。予備知識をまったく入れずに観たのに、国家とは、宗教とは、愛とは何か、いろいろな考えが頭に浮かんできて、最初から最後まで舞台に目を惹きつけられました。

そして、その感動が「あの舞台に立ちたい」という強い願望を引き出したのだと思います。特に、青年マリウス役には心を動かされて、こう演じてみたい、いや、ああ演じてみたいと、想像力をかきたてられました。

そのとき一緒に観劇したのが舞台関係者の方だったので、光栄にもバルジャンを演じた石井一孝さんにあいさつをさせてもらいました。今考えると恥ずかしいんですが、そのとき思わず「いつか僕も、マリウスとしてレミゼの舞台に立ちたいです」と言ってしまったんです。でもそのとき、石井さんに「立てるよ」と言っていただいて、自分の発言が確信に近いものになったような気がしました。

幸運なことに、それからすぐにオーディションを受けるチャンスがやってきて、念願の役をいただくことになるんですが、実際に稽古をする段になってみると、自分がこれまで築いてきたと思っていたものが、何ひとつ通じないことに愕然としました。

でも僕は、目の前に超えられない壁があると、かえってやる気が出るんです。壁を越えれば、自分はきっと成長できる。そう信じることで、やるべきことに集中できるんですね。

だから、『レ・ミゼラブル』の舞台に立つことができたことは、僕にとってとても大きな出来事でした。2007年の舞台に立って、2009年の再演にも起用していただいたんですが、そのときにも越えなくてはならない壁があって、そのおかげで大きく成長させてもらったと思っています。

舞台は、最も自分を鍛えてくれる場 (小西遼生)

僕にとっては、すべての作品が挑戦です。テレビや映画など映像作品に出演するときもそうですし、演じる機会があれば、これからもいろいろな場で活動していきたいと思っています。中でも舞台は、スタッフや共演者の方々と長い間、時間をともにして稽古をし、目の前のお客さんの直の反応を感じることができる場ですから、僕を最も鍛えてくれる場です。大切にしていきたいですね。

今回の『カエサル』も、僕にとってはとても重要な舞台です。台本を読んだ瞬間から、これがものすごいお芝居なんだということがわかりましたし、その後、読み返せば読み返すほど、新たな面白さを発見するんです。それから本読みの初日、共演する方々の演技の幅の広さにも圧倒されました。ミュージカルの場合、本稽古の前に歌稽古があるんですが、『カエサル』のようなストレートプレイはお芝居に集中して臨むことができるので、いろいろなことが学べそうです。

だから、出番のないシーンでも、できる限りスケジュールを調整して稽古に参加しているんです。こんなすごい人たちが集まるのは奇跡のようなもので、その目撃者になれるなんて最高のことじゃないですか。見逃すなんて、もったいないです。もちろん、出演者のひとりとして、僕も精いっぱいの働きをするつもりでいます。おそらくこの舞台も、役者として、人間として、僕を大きく成長させてくれるに違いありません。

小西遼生さんへQ&A

Q:最近、ハマってることは?
A:『ビリーズブートキャンプ』。最初は続けるのが苦痛でしたが、1週間を過ぎたところで楽になりました。
Q:最近、面白かった映画は?
A:『ブロークバック・マウンテン』。男と男の恋愛映画ということで敬遠していたんですが、
考えが浅かったことを思い知りました。
Q:もし、俳優になっていなかったら?
A:強いていえば、喫茶店のマスター。かつて父が経営していたことがあって、
その雰囲気にあこがれを感じています。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

一度でも舞台を観劇した人なら覚えがあると思いますが、どこの劇場でも受付でたくさんのチラシをもらいますよね。僕はこれをパラパラと見るのが好きなんです。まず、どんな物語が題材になっているかに注目して、次にどんな役者さんが出演しているかをチェックすします。少しでも気になるところがあると、とっておくんです。舞台との出会いは、人との出会いと同じように、縁が大事だと思うんですが、チラシはその道しるべをしてくれるんですね。

これから演劇をしようと思っている人へ

僕は本当に、自分に足りないものを感じることが多いんです。でも、それは決して嫌なことではなくて、足りないところを補おうと努力し続けていきたいと思っています。ときには落ち込んだり、めげてしまいそうになるときもあるけど、そんな自分も含めて「それでいいんだ」と思いたい。浮いたり沈んだりするのが自然な姿だし、きっと成長できるんだと自分を信じる気持ちを忘れたくないですね。

小西遼生さんの次回公演情報

『カエサル-「ローマ人の物語」より-』の画像画像を拡大する
『カエサル-「ローマ人の物語」より-』

累計920万部超の国民的ベストセラー、『ローマ人の物語』がついに舞台化される。著者・塩野七生が最も愛する、英雄ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の生涯に焦点を当て、壮大なスケールで描かれる一代記だ。輝かしい戦績、守旧派との確執、クレオパトラとの愛―――。裏切り、そして暗殺。「ブルータス、お前もか!」。リーダー不在の現代日本におくる、激動と波乱の歴史大作!

出演陣も、松本幸四郎をはじめ、小澤征悦小島聖小西遼生瑳川哲朗勝部演之水野美紀渡辺いっけい高橋惠子など豪華な顔ぶれ。この奇跡の瞬間を見逃すべからず!

2010年10月3日(日)~10月27日(水)
日生劇場
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取材・文/ボブ内藤 撮影/桑原克典(TFK)

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