- 神田 沙也加(かんだ・さやか)
- 1986年10月1日生まれ。東京都出身。2001年、初出演の映画『Bean Cake(おはぎ)』がカンヌ国際映画祭にてパルムドール賞受賞。02年、『ever since』で歌手デビュー。04年初舞台『イントゥ・ザ・ウッズ』が高く評価されたほか、『紫式部ものがたり』、『ウーマン・イン・ホワイト』、『レ・ミゼラブル』、『ピーターパン』などのミュージカルでも注目を浴びている。
幼いころは、お父さんとお母さんが普通にテレビに写っているという環境を不思議に思うことなく、それが特殊なことなんだと気づいたのは、ずいぶん大きくなってからでした。芸事が日常生活の延長にあって、それを「仕事にする」という特別な意識もなく、14歳のときにデビューしていました。
映画やドラマに出演したり、歌をうたったり、めまぐるしい毎日が始まって、いろいろな経験をさせてもらいました。今ではそのことにとても感謝をしています。ところが、当時の私にはそれを喜ぶ余裕などなくて、いつしか「自分が本当にやりたいことって何なんだろう?」と行き詰まってしまったんです。
20歳になる前に1年半の休業期間をいただいたときの私は、「何かひとつのことに打ち込めるものがほしい」という一心でした。そんなとき、宮本亜門さん演出のミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』の映像を観たんです。17歳のときに踏んだ初舞台のドキュメント映像です。いろいろなことが思い出されました。
私がいただいたのは赤ずきんちゃんの役だったんですが、歌いこなすのがとても難しい楽曲ばかりで、最初のころは尻込みしそうになっていたんです。ところが、亜門さんから役の説明を受け、動きをつけてもらった瞬間、魔法をかけられたように声が出たんです。亜門さんは恐るべき魔法使いですね。そういう驚きの体験を稽古の中で何度もしました。
ミュージカルは大好きで、子供のころからたくさんの舞台を観に行きました。だからこそ、自分がその舞台に立つなんてことは考えられなかったんですが、亜門さんのおかげで無事につとめることができた。毎日が一生懸命で、振り返ってみるととても楽しい体験でした。それを思い出した瞬間、「自分が本当にやりたいこと」を見つけられたような気がしました。
憧れの大地真央さんの舞台『紫式部ものがたり』に出演のお話をいただいたときは、運命的なものを感じました。休業復帰の機会としては、これ以上にないシチュエーションに思えたんです。
真央さんと初めて出会ったときのことは、決して忘れられません。当時、私は13歳くらい。母のショーを観にいったんですが、終演後、真央さんが楽屋にあいさつにいらっしゃったんです。その姿を見た途端、「なんてかわいい女性なんだろう」と感動している自分がいました。オーバーな言い方かもしれないけど、光のオーラが見えるような驚きでした。それ以来、真央さんの公演があるたびチケットを予約して、おっかけをするくらいのファンになっていました。写真集やDVDも買って、メイクの仕方を真似してみたり。
ですから、『紫式部ものがたり』に出演するということは私にとって、まさに「夢がかなった」とも言える体験でした。真央さんは紫式部を演じたんですが、劇中劇でダンディーな光源氏になり、夕顔に扮した私と踊るシーンがあったんです。これはとても光栄なことで、同時にとても緊張しました。そのせいか、初日を終えたときのことは記憶に残ってないくらいなんです。
もちろん稽古では、たくさんのことを教わりました。真央さんのすごいところは、観察力の鋭さ。おそらく、つねに客観的に自分を見る目が働いていて、立ち振る舞いすべてに意識が行き届いているんです。初めて出会ったときに見た光のオーラの秘密がわかったような気がして、とても勉強になりました。
これからも、いろいろなことに挑戦していきたいですけど、ミュージカルの舞台に立つことは私にとって、特別な挑戦のような気がします。歌って、踊って、演技して、あらゆる芸事に必要なスキルを総合的に求められるのがミュージカルなんじゃないかと思っていて、この世界では、つねに自分を磨いていかなくては通用しません。実際、自分の力が及ばず、くやしい思いを何度もしましたけど、そういう実力の世界だからこそ頑張れる。ファイトが湧いてくるんです。オーディションでつかみとった役にはすべて思い入れがあるし、その役をきちんと演じきれるかどうかと思うと、震え上がるような緊張感を感じます。でも、それが「生きてる」って実感にもつながるんですよね。
今回の『ファンタスティックス』も、私にとってとても思い入れのある作品です。実は『イントゥ・ザ・ウッズ』のオーディションを受ける前に亜門版『ファンタスティックス』(2003年)の初演を観て、とても感動したんです。私もいつか、ヒロインのルイザ役を演じてみたい。そう願って、楽譜を取り寄せて歌の練習をしていたんですが、2005年の再演のときにはたまたまタイミングが合わなくて、オーディションを受けられなかったんです。2010年になって、やっとチャンスがめぐってきたわけですね。オーディションを終えて亜門さんに、「公正な目で見て、キミを選んだんだからね」と言っていただいたときはとてもうれしかったですし、『イントゥ・ザ・ウッズ』で出会ったときと比べて、私がどれだけ成長してきたかを見せたいと思っています。
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ホリプロ創業50周年記念公演
ミュージカル『ファンタスティックス』 『ファンタスティックス』は、1960年にアメリカのオフ・ブロードウェイでの初演以来42年間"世界最長ロングラン"記録を保持し、世界67カ国で上演されている傑作ミュージカル。宮本亜門の演出による日本版は、すでに2003年に初演、2005年に再演され、高い評価を受けた名作だ。2010年5月~9月には英国人キャストによるロンドン版の演出に宮本亜門が招聘され、成功を収めた。そしてこの秋、ホリプロ創業50周年記念公演として同作が再び上演される。鹿賀丈史、田代万里生というミュージカルの名優に加え、個性あふれるキャストを相手に、ヒロインを演じる神田沙也加がどのような演技を見せるのか、乞うご期待!
東京 大阪 2010年10月9日(土)~31日(日) 2010年 11月20日(土)・21日(日) Bunkamuraシアターコクーン シアター・ドラマシティ
取材・文/ボブ内藤 撮影/松谷祐増(TFK)











