演劇なんてまったく興味がなかったんですよ。多分、このインタビューで登場する俳優さんの中で一番と言ってもいいぐらい。じゃあ、なんでココにいるかと言うと、強引なスカウトがきっかけなんですね。
そもそも大阪芸術大学に入学したのは、演劇ではなくミュージカルを勉強したかったんです。高校のとき映画「フラッシュダンス」を見てジャズダンスに興味を持つようになり、ミュージカル専攻科へ進学。
でも大学の学食で同じ学科の先輩が「演劇部に入らないか」「入らなくてもいい、遊びにくるだけでいい」って、会うたびに執拗に声をかけてくるんですよ。人相が悪くて、いつ会ってもジャージ姿の男性。それが古田新太さんだったんですけど(笑)。古田さんだけじゃなくて、演劇部のメンバーみんながジャージ姿で小汚い。これで「演劇って絶対イヤ」ってイメージを強く植えつけられちゃったんですね(笑)。
だから、古田さんに会わないよう逃げ回ってたんですけど、当時ミュージカル学科って15人ぐらいしかいなくて、ほぼ毎日顔をあわせるんですよ。誘いを断り続けるのも限界に達し、入らないけど一度だけ見学に行きますってことで顔を出したら、ひとつ先輩の高田聖子ちゃんも見学に来てて。そこで、座長のいのうえひでのりさんが「2人で踊ってくれる?」なんて言うから踊ってみたら、それが次回公演の振り付けだったんですよ。まぁ、一言でいうと策略にハマったというか。それが私と「劇団☆新感線」との出会いでしたね。
そんな流されるように入団しましたから、やる気になるはずもなく、自分が出演するシーンだけ稽古して帰る日々。だから、本番までどんなストーリーか知らなかったこともありましたよ。ホント、今考えれば信じられないですけど。この頃は、芝居が面白いというよりも、今まで出会ったことのなかった、おかしな演劇人たちと遊ぶのが楽しいって感じでしたね。
でも、当時ヒロインをやっていた看板女優が寿退団して、私がその座を譲り受けてから状況が一変。実際は、譲り受けたなんてカッコいいものじゃなくて「今度は台詞の多い役をやってみるか」と座長に言われただけなんですけど。それで「井戸穴ジョージの大冒険」という芝居で初ヒロインを勝手にキャスティングされたんです。しぶしぶ稽古に出たものの、想像以上に芝居が難しくめちゃくちゃ怒られるんですよ。怒鳴られるわ、物は飛んでくるわで。だから、怒られたくがないために頑張ってたというのが本音。
案の定、初ヒロイン役は散々たる結果に終わったんですが、これがすごく悔しかった。この舞台がきっかけで、上手に演技が出来るようになったら絶対に辞めてやるって、おかしなモチベーションのもと芝居に本気で取り組むようになったんです。今まで運動会でも受験でも頑張ったことのなかった私が、初めて頑張って何かをやりとげようと思ったのが芝居だったんですよね。
そんな頑張りが認められたのか、舞台に立っている私を見てテレビや他のカンパニーでの出演依頼が増えてきたんです。とは言え、適齢期にもなってましたから、早く寿退団したいなとも考えてました。
でも、劇団を飛び出して「ハムレット」に出演したときに、すごく意識が変わったんですよ。いままでは役者、大道具、衣裳、メイク、すべて自分たちでやってましたから、専門のスタッフがいる大きな舞台では、役者は役のことだけ考えていいんだと恵まれた環境に感激したし、他の役者さんとの出会いも刺激的でした。劇団でも先輩で、一応ヒロインだったから、誰も自分にアドバイスをしてくれなくなっていて。
でも、他の女優さんに出会うことで、それまで寿退団しか頭になかったけど、離婚して役者を続けてる方、家庭を持ちながら舞台にあがっている人など、色々なライフスタイルがあって、結婚後に役者を続けてもいいんじゃないかと考えはじめたんですね。結果的に「劇団☆新感線」は寿退団したんですが、芸能活動に復帰する際に、役者という選択肢を入れたのは、このときの出会いが大きいと思います。
8年ぶりに舞台にあがることで、役者として変化したのは母になったこと。たとえ母親役じゃなくても、女性として成長した部分が見せられるだろうし、見せたいところでもあります。これからが、私の新たなターニングポイントになると思っているんですよ。
取材・文/中屋麻依子(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK) スタイリスト/今村文子 衣装/iiMK(イトキン)・クランプリュス(イトキン)・TSUTSUMI((株)ツツミ)











