- 小倉 久寛(おぐら・ひさひろ)
- 1954年10月26日生まれ。三重県出身。学習院大学法学部卒業後、大江戸新喜劇を経て、三宅裕司が主宰する劇団スーパー・エキセントリック・シアターの創設メンバーとして参加。数多くの作品に出演し、その独特の風貌と、コミカルな動きが人気を博す。劇団創立30周年を超え、この10月には第48回本公演『オーマイゴッド ウイルス』に出演する。
とにかく物心つくまで、演劇とはまったく関係のないところで生きてきました。小さいころは力道山に憧れて腕立てや腹筋をするような子供だったし、大学時代に所属したのは空手部と陶芸部。自分で焼いたカワラを手刀で割ってたわけです(笑)。
演劇の2文字を身近に感じるようになったのは、大学の卒業が近づいて就職を考えるようになったのがきっかけ。運の悪いことにオイルショックの時期で、ものすごい就職難だったんです。どうしようかなと思いあぐねているとき、中村雅俊さん主演のテレビドラマ『俺たちの祭』を観たんですが、これが劇団を舞台にしたドラマだったんですよ。ああ、そういう生き方もいいなぁと興味を持ったところに、雑誌『ぴあ』で「大江戸新喜劇の旗揚げ公演」という記事を見つけて観に行ったんです。
もしそれが「喜劇」じゃなくて「シェイクスピア」だったら、絶対に行かなかったでしょうね。「旗揚げ公演」ってところにも何となく楽しそうな感じがありました。要するに、それくらいの軽い気持ちだったんですよ。
で、そこで三宅(裕司)さんと出会うわけです。三宅さんはそのころからすでに、すごい才能を持っている人に見えました。お客さんを自由自在にあやつって、ドカンドカンと笑いをとっていましたからね。観劇後、すぐに入団希望を申し込んだのは、そんな三宅さんの魅力に惹かれてのことでした。
だから、劇団に入団して1年半くらいたったとき、三宅さんから「新しい劇団を作るから、一緒に来ないか?」と誘われたときはうれしかったですよ。即答で「はい」って答えてましたね。
三宅さんのスーパー・エキセントリック・シアター(SET)は、設立当初から「ミュージカル・アクション・コメディー」というコンセプトで、とにかく来てくれたお客さんをいかに楽しませるかということに徹していました。だけど、当時の演劇界ではそういう劇団は少数派で、雑誌にも取り上げてもらえないような状態だったんです。
そのころの目標は、お客さんを1000人呼べる劇団になること。当日券の窓口に並ぶお客さんに整理券を配るのが夢で、お菓子の箱に用意していたんだけど、それを配る機会はなかなかやってこなかったですね。その日がやってきたのは1年、あるいは2年くらいだったかな。シアターグリーンの前にお客さんの行列ができて、「整理券持ってこい!」って声を聞いたときのうれしさは今でもよく覚えています。
もうひとつの目標は、渋谷のジアンジアンに出演すること。とても審査が厳しくて、若手の劇団の登竜門と言われた劇場でした。その夢がかなったのは、当時よく世話になっていた照明さんが推薦してくれたから。うれしかったですね。
このときも、忘れられないことがありました。舞台の仕込みをしていたときのことです。三宅さんと僕で、セットのペンキ塗りをしていたんです。すると、照明スタッフの中にちょっと仕事の遅い人がいたんでしょう。チーフの照明さんがこう怒鳴る声が聞こえたんです。「何やってんだ、ちゃんとやれ!オレはこの劇団にかけてんだぞ!」って。そのとき、刷毛を持った三宅さんの目に光るものを見たことは、一生忘れられないでしょうね。
気がついたら2009年で劇団も創立30周年を迎え、人生の半分以上をSETの劇団員として過ごしたことになります。僕にとって劇団は、空気みたいな、体の一部みたいな、とにかく掛け替えのない存在。間違いなく言えるのは、三宅さんと出会って、劇団に入ったということが今の僕を作っているということです。
だから、「永遠の子分肌」と言われるのは僕自身、当然のことだとずっと思ってきました。ところがです。マネージャーに「50歳を過ぎて、そろそろ体が動かなくなるんだから、今のうちに舞台で踊っておくのもいいんじゃないですか」と提案されて、2008年にひとり立ち公演をすることになっていました。
劇団の公演でダンスを踊ることはあったけど、プロのダンサーさんにまじって10分間もブレイクダンスをするなんて初めての経験です。正直、しんどい思いをしましたけど、すべての公演を無事終えることができたときは独特の達成感がありましたね。
2010年1月には、2回目のひとり立ち公演でフラメンコギターを披露。7月には、世田谷ベンチャーズのリードギタリストとして、バンドデビューも果たしました。新たな挑戦をするのは本当に楽しいことで、そういう場を与えてくれる周囲のスタッフの人たちには感謝しなければいけませんね。
ひとり立ち、という言い方はオーバーだけど、自分が先頭に立つ経験をしたおかげで、劇団の本公演にも新鮮な気持ちで臨むことができるようになったのは事実です。今回の『オーマイゴッド ウイルス』も、その意味で本当に楽しみです。来てくれたすべてのお客さんに楽しんでもらえる公演にするという意気込みは、創立のころから変わりません。どうか、ご期待ください。
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スーパー・エキセントリック・シアター第48回本公演
ミュージカル・アクション・コメディー『オーマイ ゴッド ウイルス』 昨年30周年を迎え、新たな第1歩を踏み出す劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)の待望の新作がいよいよ上演される。"正しい悪のススメ"をテーマに、「ミュージカル、アクション、コメディー」を旗印とした良質のエンターテインメントを仕立て上げる。ますます快調な意欲作、ぜひとも劇場で見届けたい。
2010/10/1~17 東京芸術劇場 中ホール
取材・文/ボブ内藤 撮影/清水真帆呂(TFK)











